11話 オーバージーニアス。
11話 オーバージーニアス。
(どうにかしないと……どうにかして、この状況を処理しないと……)
ザンクの処理方法について思案するモナルッポ。
(ザンクを殺せないというのが厄介……どうすれば、この状況を打破できる……考えろ……考えろ……)
必死に頭をまわしながらも、ザンクの命令どおりに、自慢の秘蔵禁書を公開する。
この禁書コレクションは、世界各地で見つけてきた超絶レアな品々。
ダンジョンの奥深くで入手したモノもあるし、
他国の宝物庫から盗み出したモノもある。
勉強家のモナルッポは、本物の真理や叡智を身に着けようと、
これまで、貪欲に、禁書やアイテムをかきつめてきた。
「おお、なかなか、おもろいコレクションやないか。……ほー、へー」
などと、感想を口にしつつ、
ザンクは、目の前に並べられた禁書を、すさまじいペースで読んでいく。
「魔導書の内容は深くて暗い。そんなペースで読めるわけがない」
ボソっとそうつぶやいたモナルッポ。
そんな彼を横目に、ザンクはニィと笑みを浮かべて、
「まだ、ザンクさんのイカれ方が理解できてないようやな。OK。ほな、もうちょい、詳細を教えたろう」
などと言いつつ、読み終えた禁書を一冊、モナに手渡して、
「好きなページ開いて、そのページ数を言ってみぃ」
本を受けとったモナルッポはいぶかしげな顔をしつつ、
パラパラと、テキトーに本をめくり、
「……192ページ」
目についたページ数を口にする。
すると、ザンクは、
「魔法とは、幽界の虚数エネルギーを顕界へと確定させていく高次演算。その処理過程は、当然だが、複雑で難解。そんな魔法の高等制御を為そうとすれば、当然、果てなき悠久の研鑽を必要とする」
すらすらと、つまることなく、一行目からそらんじていく。
(……っ)
ザンクは、本に書かれている文章を、完璧に暗唱した上で、
「魔法をあつかうには、認知の領域外への自動アクセスが必須の模様やな」
自身の見解を述べていく。
『ただ暗記しただけ』ではなく、
ちゃんと、自分の中に、
『掌握した知識』として落とし込んでいる。
「――『この辺の手順』に関する『省略』を可能とするんが、スペシャルなんかの補助スキル……ザンクさんは、どうやら、そのへんのあれこれは持ってへんようやけど……まあ、『近道が出来るだけの知識』があれば、グラフィカルユーザーインターフェースなしでも、どうにか、端末操作は可能。補助とか一切なくとも、ザンクさんなら、どうにか、虚理と対話することもできんことはない」
普通は出来ない。
絶対にできない。
けれど、ザンクさんには出来る。
――彼は、『遊』の属性を持つ、特別な田中だから。
※ 田中・イス・斬九の属性『自由賢者 調和遊人』。
「モナルッポ、ナイフをよこせ」
「ナイフ? そんなもの、いったい――」
「ええから、はよぉ」
(……いったい、何をする気だ……)
命令にしたがい、モナルッポは、アイテムボックスからナイフをとりだして、ザンクにわたす。
その間、心の中で、
(こいつの頭は、確かに、特別らしい……だが、記憶力と理解力が優れているだけでは、戦場だと、さほど役には立たない……敵が、強大な力を持っていた場合、知恵だけで立ち向かうことは不可能。事実、こいつは、さっき、レバーデインに殺された……)