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8話 死んでも治らない。


 8話 死んでも治らない。


「――ぐふっ……」


 『魔力の槍』で頭部を貫かれたザンクは、

 そのまま、即死してしまった。


 非常にあっけない最後だった。


「モナルッポ。何も出来ないお前でも、死体の処理ぐらいなら、さすがに出来るだろう」


 冷めた目で、ザンクの死体を見下ろしながら、

 レバーデインは、モナルッポに、


「最後にもう一度だけ言っておく。明日の大研究会をサボることだけは、絶対に許さない。いいな」


 強い口調で、そう言い捨てると、

 そのまま、モナルッポの部屋を後にした。


 残されたモナルッポは、

 ザンクの死体の前で、片膝をついて、


「確かに、ペチャクチャとやかましいヤツだったが、なにも殺すことはないのに……」


 申し訳なさそうに、そうつぶやくと、


「すまないな。勝手に召喚しておいて。……死体は綺麗に埋葬しておく。だから許せ、とは言わないが、成仏してくれ」


 モナルッポが、軽く頭を下げながら、そう言った直後のことだった。






 ――『条件を満たしました』――

 ――『Nジェイル、発動します』――






「ん?」


 モナルッポの頭の中で、『誰か』が、何かを言った。

 そう理解した瞬間、



「ぐっ、ぅぉおおおおお!」



 体が燃えるように熱くなり、


「な、なんだ、これは……ぁああっ……ぐぅう」


 全身からグキグキと音がする。


「ぎぬぅううぁああああ!」



 ――『Nジェイル』

 『田中・イス・斬九』が死亡することで発動。



 『ザンクの死を止められなかった召喚主は、

  その報いとして、ザンクの奴隷となる罰を受ける』



 また声が聞こえ、モナルッポは、

 『自分にかかってしまった呪い』を理解する。


「ど、奴隷? な、なぜ、私が?! レバーデインが受けるならともかく!」


 と、正当な文句を口にするが、

 しかし、そんな『まっとうな訴え』など余裕でシカトされる。

 世の中は理不尽なもの。

 コトが正常に処理されることの方が珍しい。



「うぶっ……」



 Nジェイルが発動すると同時、

 ザンクの頭部が、ビデオの逆再生みたいに、

 ヌルヌルと再生されていき、

 ほんの数秒で、『魔法の槍』に貫かれる前の状態へと戻った。


「ぶはぁ……」


 酸素を取り込み、脳へと供給する。

 バっと目を開き、周囲を確認すると、


「はぁ、はぁ……」


 深い呼吸を繰り返しつつ、


「んー……ほむふむ、ほむほむへむ……どうやら、ザンクさんの死がトリガーになったようやな。これは、ザンクさんの中に隠されとった能力が目覚めた感じ? ……ん、まあ、そう言って差し支えないやろう。ちょっとちゃうっぽいけど、まあ、細かいところはどうでもええ」


 ザンクは、モナルッポと同じで、自分の状況を、あるていど理解していた。


「なんでかはサッパリ分からんけど、Nジェイルは、ザンクさんの強い味方らしい。ありがたい話やで。おかげで、死なずにすんだ。いや、まあ、一回は死んでんねんけど、なかったことに出来たから、死なずにすんだと表現して、何の問題もないやろ」


 一度死んでも、ザンクはおしゃべりなままだった。

 『人間の悪癖は死ぬまで治らない』という言葉があるが、

 『ダメな部分は死んでも治らない』ということが証明されてしまった。



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