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5話 ザンクさんは、かえれない。


 5話 ザンクさんは、かえれない。


「どれだけ、ついていないんだ……くそったれ」


「言いたい放題やな。ザンクさんほどの天才を味方にできるチャンスを得たというのに、そんなに落胆するかね。『田中家の実情』を理解しとるヤツが、この現場を目撃したら、あんたの『とんでもないラッキーマンぶり』を、全力で拍手喝采しとるところやで」


「うるさい。もういいから、消えろ」


 そう言って、モナルッポは、指をパチンと鳴らした。

 召喚権のリンクを切って、ザンクを元の場所に返そうとする。

 ――しかし、


「……ん?」


 なぜか、リンクを切ることができない。

 『現代人の感覚』で例えると、

 コンセントを抜いているのに、なぜか、電化製品が動いている感じ。


「なんだ? はぁ? どういう状態だ?」


 モナルッポは何度も指を鳴らす。

 指を鳴らすと言うのは『自分の意志』を明確にしている行為。

 『スイッチを押す』『コンセントを抜く』などの行為と類似する。


 モナルッポは、ザンクを返す気満々。


 マスターが『接続の終了』を望めば、

 普通は、その時点で、確実にリンクは切れる。


 なのに、


「ど、どういう……なんで……」


 なぜか、どうあがいても、ザンクを返すことが出来ない。


「くっ……ふざっけるなよ、このクソ忙しい時に、なんで、こんな、ワケの分からんトラブルが頻発するんだ……っ」


 と、そこで、






「――おい、モナルッポ、入るぞ」






 レバーデインが、許しもえずに、モナルッポの部屋にズカズカと入ってきた。

 そして、当然、ザンクを視界にとらえる。


「……ん? おい、モナルッポ……コレは、誰だ?」


「え、あ、ああ……」


 モナルッポは、瞬時に、頭の中で、言い訳をくみたてると、

 そのまま、ペラペラと、


「ちょっと、試しに、ランダム召喚をしてみたんだけど」


 『嘘』は、『真実の中』に混ぜて、初めて『本質的な効果』を発揮する――ということを、知識的にも経験的にも理解しているモナルッポは、


「……普通に失敗して、人間を召喚してしまったんだ。いやぁ、自分でも嫌になるよ、ははは」


 極力、真実だけでセリフを構築していく。


「……モナルッポ……お前は、本当に、どれだけ無能なんだ。能力が劣るだけではなく、運まで終わっているのか」


 心底から、呆れかえり、そうつぶやいてから、

 レバーデインは、


「まあ、お前のミスなど、どうでもいい。それより、明日の『大研究会』の準備は終わっているのか? これまでは、おまえのズボラにも目をつぶってきたが、いくらなんでも、大研究会に欠席するというのは許さないぞ」


 大研究会は、年に一度、各国の重鎮を呼んで、盛大に、各々の研究結果を論じ合う学会。


 今回は、セファイルのサーナ王女と、トーンの国家主席カバノンと、セア聖国の大神官プッチ、フーマーからは使途のケイレーン、カルからは相談役のコーレンが参戦。


 大研究会のテーマは、『人類の結束』であり、忌憚きたんのない意見のぶつけ合いと研究発表が求められている。とはいえ、もちろん、各国の秘密の技術に関しては秘匿とする。


 表に出せる技術を発表するだけだが、しかし、その『表に出せる技術』の程度で、ひそかに、国のランク付けがされるため、下手な研究結果は出せない。


 それぞれの国の真剣勝負の場。

 それが、年に一回行われる大研究会。



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