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1話 優しいモナルッポ。


 1話 優しいモナルッポ。


(……また、妙なことになったなぁ……これ、もしかして、あれか? 異世界転移的なアレか? アニメとかでは見たことあったけど、まさか、自分の身に、これが、起こるとは思ってなかったなぁ。引くわぁ)


 などと、心の中で、つぶやきつつ、

 『彼』は、『モナルッポの執務机』の上に置いてある本を手に取り、


(うん……間違いなく、地球やないな。こんな言語は存在せん……)


 パラパラと、本に書かれている字を見つめながら、

 チラっと、『大きな窓』の向こうに広がっている夜空を眺めて、


(星の位置も明らかにおかしい……空気の質も、だいぶ違う。……いやぁ、しかし……マジかぁ……ははは、こら、おもろいなぁ)


 達観したような、あるいは適度に楽しんでいるかのような、

 そんな、『ぬるい質量』を伴う『乾いた笑い声』を出す『彼』に、

 モナルッポは、ガックリしつつも、最低限冷静に、


「……わ、私の本に触るな……」


 そう言って、指をパチンと鳴らした。

 すると、


「おっ……おおっ……っ」


 『彼』の体が、自分の意志に反して動き出す。

 本を、丁寧に机に戻して、

 モナルッポの前まで勝手に歩く。


(おお、すごいな……これ、もしかして、魔法か? はは、催眠術とかかかったことがなかったけど、もし、かかっとったら、こんな感じやったんかな? それとも、催眠術とかとは、やっぱり、毛色が違うんやろうか)


 心の中で、そんなことを思っていると、

 モナルッポが、


「お前、人間か? それとも、高位のフェイクオーラで素性を隠している『特殊な存在』か? 正直に答えろ」


 そう問いかけられた『彼』は、


「……」


 ジっと、モナルッポの目を見る。


「聞いているのか? おい! 言っておくが、俺の存在値は700を超えている。貴様が仮に、俺のセブンスアイですら見通せないほどの『高位のフェイクオーラ』が使える化け物だったとしても、さすがに、俺をどうこうすることはできんぞ。そもそも、召喚主に対して反抗など出来んしな。そこらの出来の悪い召喚士ならいざ知らず、この俺に逆らうことは不可能だ」


「……」


「徹底してシカトとは……ずいぶんと反抗的な態度をとってくれるじゃないか。それとも、しゃべれないのか? そうであるならば、態度でしめせ。私の言っていることが何も理解できないというわけでもあるまい。知性のない動物だって、意思の表現ぐらいはできるのだから」


「……」


「悪いが、反抗的なカスの相手をしているほどヒマではない。俺は忙しいんだ。こう見えても、世界の命運を背負っているんでね。――これが最後の質問だ。もし、応えなければ殺す。お前は人間か?」


「ん? ンー、まあ、そウやと思うで」


「喋れるじゃないか。無駄な時間をとらせるな。鬱陶しい」


「すんまヘンなぁ」


(妙なイントネーション……そういえば、あの実行委員も、同じようなイントネーションだった……たまにいるよな、こういう喋り方するやつ……)


 妙なイントネーションに疑問は抱いたものの、

 モナルッポは、『それ以上の疑念』は抱かない。

 なぜなら、『完璧な発音』で喋れる人間の方が少ないから。

 それに、この手の『独特のイントネーションでしゃべる者』は、ごくたまにいる。

 『吃音』や『子供の舌足らず』、あるいは『~でやんす系の口調』などと同じで『たまにいる、妙な喋り方』という認識をされている。


「それで、お前の名前は? セブンスアイで見たところ、ステータス上の名前は『39』となっているんだが、これは名前か? それとも――」


「あ、ごメん、にーサん」


「ぁ?」


「悪いケど、ここ、読んでくレへん?」


 そう言いながら、机の上の本をもってきて、

 とあるページの、一節を指さす。


「……何を言って――」


「たノむワ。それ、してクレたら、ちゃんと質問に答えるカら。おネがい、おネがい」


「……」


 『なんだ、こいつ』と思いながらも、

 モナルッポは、


(……変なのが召喚されてしまった……弱いだけではなく、流暢にしゃべることすら出来ず、妙な奇行をするバカ……勘弁してくれ……)


 心の中で、そう嘆いていると、


「頼むテ、マじデ。おネがい。してクレたら、ほンま、言うこと聞くかラ」


 などと、しつこく言ってくるので、鬱陶しくなったモナルッポは、

 下手に拒絶するよりも、サクっと処理した方がはやいと考え、


「はぁ……」


 と、一度タメ息をついてから、

 『彼』が望む通り、音読をしてあげた。


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