最終回 理論上最高の召喚。
最終回 理論上最高の召喚。
「――さぁ、きてくれ。頼むから……人類の希望となる化け物……頼む……頼む!」
願いを込めて、モナルッポは、人類史上最高のランダム召喚に挑む。
――願いの中、歪なジオメトリが、空間に描かれる。
『異質な幾何学』だと思った。
これまで、モナルッポは、幾度となく、召喚魔法を使ってきたが、
『ここまで奇妙な空気感』は初めてだった。
(さすがは、ランク28のランダム召喚……期待させてくれるじゃねぇか……)
純粋なワクワク感も沸き上がる。
『世界を想う王』としての期待値だけではなく、
『一人の男』としてのロマンチックゲージも爆上がりする。
(……もし、『上振れ』してくれた場合、召喚される者の存在値は破格になること間違いない)
ランク28のランダム召喚。
その中で、もし、大当たりを引いたら、いったい、どうなるのか。
(できれば……そう、できれば……『単騎で、バーチャを足止めできるタンク系の召喚獣』であってほしい)
もし、その願いが叶えば、
『聖主』とやらが実在していたとしても、
勝機は見えてくる。
――可能性の扉が開く。
(フィジカルに優れた、忠誠心の高い者……上位のドラゴンや鬼などが理想……どうか、どうか、どうか……っ!)
ジオメトリの立体性が加速していく。
ほのかに淡く光る。
ゆっくりと、回転しはじめる。
孵化する直前の卵みたいに、
ピシピシと、ジオメトリにヒビが入る。
(さぁ……来いっ!)
天に祈る。
神と呼ばれる高次生命がもし存在するのであれば、
どうか、応えて欲しいと懇願しながら。
その結果、
ジオメトリから、
(……ん? なんや、ここ……どこや?)
――『人間』が召喚された。
魔人でも進化種でもない。
人間っぽいモンスターでもなんでもなく、
完全に、ただの人間だった。
大柄でも小柄でもなく、中肉中背。
鍛えられているわけでも、ヒョロガリすぎるわけでもない、スタンダードなスタイル。
黒髪で黒目で黄色人種。
別に、珍しくもない、風貌。
オーラも、魔力も、微弱にしか感じない。
一見すると、間違いなく、ただの一般人。
(……ぇ?)
あまりの出来事に、モナルッポは呆然としてしまう。
そんなわけがない――と、すぐさま、セブンスアイで、
召喚された『彼』を鑑定する。
その結果、
「に、人間……間違いなく……しかも……存在値20程度の……弱い……人間……な、何で……ランク28の召喚だぞ……史上最高の……空前絶後の……前人未踏の召喚だったのに……どうして……なんで……」
つい、ガクリと、地に膝をついてしまう。
そんなモナルッポの視線の先で、
ただの人間である『彼』は、周囲を観察しながら、
(……また、妙なことになったなぁ……これ、もしかして、あれか? 異世界転移的なアレか? アニメとかでは見たことあったけど、まさか、自分の身に、これが、起こるとは思ってなかったなぁ。引くわぁ)
と、心の中でそうつぶやきつつ、軽く引きましたとさ。
――めでたし、めでたし。