89話 2択。
89話 2択。
「面白いジョークです、レバー兄様。実際のところ、モナ兄様が、レバー兄様に勝っている部分など皆無でしょう。知っています? モナ兄様の存在値って、私が10歳の時の存在値より下なんですよ。もう、笑ってしまいますわよね。もし、私が、モナ兄様だったら、とっくの昔に自殺していると思いますわ」
そこで、レバーデインは、渋い顔で、
「才能がないのは別にいい。先天的な資質に関してはどうしようもないから。しかし、『後天的にどうにかなる部分』を怠った者は救いようがない。あいつは本物のクズだ。才能がないからではない。人間性に大きな問題がある。王族としてではなく、人として欠陥しかない。本当に、どうしようもない」
★
『何も知らない鬱陶しい二人(兄と妹)』を置き去りにして、自室に戻ったモナルッポは、アイテムボックスから、準優勝商品である『素でランク25の魔カード』を取り出して、
「さて……どうするのが最適解かな……」
この魔カードをもらった瞬間から、ずっと、
どのように活用すべきかを考えていた。
どうすれば、最善となるのか。
正直、『解答』は分からない。
戦争という科目の問題集に、『100点満点の答え』は存在しない。
いや、もしかしたら存在するのかもしれないが、今のモナルッポに、その『存在するかどうかも分からない戦争の真理』に辿り着ける力はない。
だから、迷う。
(これだけ大きな力……取れる手段は無数にある……)
無限の可能性の中から、結論を選択しなければいけない。
これが、王の仕事。
政治という概念の本質。
『上に立つ者』の責務。
この重責と向き合うこと、それが支配者の義務。
破格の重荷を背負っているから、『偉そうにふんぞり返っても、多少は許される』というだけで、『ふんぞり返ること』は仕事ではない。
「2択だな……」
無限の選択肢の中から、
どうにか、2択にまでしぼりこむことはできた。
「アイテム生成用の魔法にするか……それとも、召喚魔法にするか……」
これだけ強力なアイテムなので、単発の攻撃魔法で使うよりも、
永続的に恩恵を得られる使い方の方が絶対に賢い。
そんなことは、考えるまでもないこと。
(アイテムに関しては、最悪、聖龍王国から鹵獲するという手段を取ることもできる……破格の召喚魔法で、強力な配下を得ることが出来れば……その強力な配下に、鹵獲した装備品を与えて強化することも可能……)
どうすれば、人類側の戦力が、より厚くなるか。
2択にまで絞ったが、ここから先も、無数の分岐点が存在する。
頭の中がカオスで埋め尽くされる。
予想もできない展開すら予想し尽くさなければ、この戦争には勝てない。
(……自力生成も、鹵獲もできない場合を考えて、強力な装備品を生成した方が得か……それとも、最大値を求めて、強力な召喚獣を呼ぶか……)
無限に沸き上がってくる『メリットとデメリット』を精査した上で、
「――ランダム召喚……が最適解か?」
最終的に、一つの結論を出した。
正直、この選択は、かなりのギャンブル。
とても安全策とは言えない。
しかし、現状を考えると、『無茶は承知で突き進む必要がある』という考えに至った。