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82話 バーチャ・ルカーノ・ロッキィは折れていない。


 82話 バーチャ・ルカーノ・ロッキィは折れていない。


「――凛霊打りんれいだ――」


「ぐへぇえぁああああっっ!!」



 モナルッポは、盛大に吐血する。

 顎を砕かれて、首の骨にも甚大な損傷。


 反射的に、回復魔法で、致命傷部分だけは対処したが、

 頭がクラクラして、視界がせまくなっているため、

 正確なファイティングポーズをとることができない。


 そんな、ボロボロのモナルッポに、

 バーチャは、


(これだ……これが正しい。私を前にした者は、こうあるべきだ……私という抗えない超神を前にして、ただ絶望する……それでいい……そうでなくてはならない……それ以外は……いらない……)


 ボソっと、そうつぶやくと、

 虚空をにらみつけて、


(この光景だけを『世界の全て』とする。そのためにできることはすべてやる。――私は必ず、すべてを喰らい尽くす……センエースも……ティー・ヒャクヨンも……何もかも全部……この世のすべてを奪い取り……そして、私が、真なる神の王となる……)


 Tに手も足もでなかったが、しかし、バーチャは、わずかも折れていなかった。

 バーチャの『諦めの悪さ』も相当なもの。


 現段階では、Tの方が圧倒的に強いので、

 バーチャは、黙って軍門にくだった。

 しかし、それは、ふところにもぐりこんだだけ。

 わずかも戦意を失ってはいない。


 Tに、あれだけ、圧倒的な力の差を見せつけられていながら、

 しかし、バーチャは、絶対に、ひれ伏したりはしない。

 形の上では、土下座でもなんでもするつもりだが、

 しかし、腹の底では、いつも舌を出している。


 ――バーチャは、自分以外を信じない。

 そして、いつだって、貪欲に、『最強』を求め続ける。

 壁が目の前に現れたら、

 その壁を超えることを全力で考える。


 ――そうやって生きてきた。

 ――だから、超神になれた。



「はぁ……はぁ……」



 バーチャの強さを目の当たりにして、

 モナルッポは、心が折れかけていた。


(桁違いの化け物……こいつは、ドーキガンよりも、間違いなく強い……)


 もし、モナルッポが、王を目指していなければ、

 ここで膝を屈していたかもしれない。


 もし、ドーキガン・ザナルキアを知らなければ、

 バーチャを崇拝していたかもしれない。


 ――しかし、モナルッポには夢があり目標があった。

 だから、歯を食いしばることができた。



「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」



 意地とプライドと夢を、心にぶちこんでいく。

 魂全部で、バーチャと向き合う。

 自分の中にある全部を使って、

 『バーチャという壁』を超えようともがく。


 できるかどうかはどうでもよかった。

 とにかく試すしかない。


 このまま敗北して、おめおめと国に帰ったら、

 バーチャという、『とんでもない敵』の『虚像』に、心が折れてしまうと思った。


 戦争になった時、キチンと抗うためには、

 せめて、ガチンコの一撃を叩き込んでおく必要があった。


 殺し合いにおいては、心の機微が、結末を大きく左右する。

 モナルッポはそれを知っている。

 だから、引かない。

 だから、ここで、全力を出す。


 そんなモナルッポの覚悟に、神器が応えてくれた。

 頼んでもいないのに、勝手に発動する。






『――【マイクロ・サイコジョーカー】を起動します――』




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