81話 クソ重たいグリムアーツ。
81話 クソ重たいグリムアーツ。
こかされたモナルッポは、すぐさま立ち上がる。
そのまま、再度、バーチャから距離をとり、
(……破格っ!)
すぐさま、バーチャを判定した。
(これが、バーチャ・ルカーノ・ロッキィか。……し、信じられん強さ……底が見えない……少なくとも、本気の俺以上であることは確実……異常っ)
冷や汗があふれる。
心のザワつきがとまらない。
(ドーキガンなら、こいつに勝てるか? 分からない……『こいつの強さ』に何か『秘密』があるのであれば、それを暴くことで、どうにかしたいところだが、もし、この強さに、トリック的な裏がないのであれば……)
ツーっと、冷たい汗が全身を流れていく。
(こいつ一人に……三柱全員でかかる必要が出てくる……っ)
ギリっと奥歯をかみしめる。
絶望的な未来を想って体が震える。
(正確な情報が必要だ……もっと『知る必要』がある……せめて、バーチャの『強さの底』を持ち帰るっ!)
バーチャという強者に対する恐怖を胸の奥にしまいこみ、
モナルッポは、あらためて突撃する。
今度は、試しの一手ではなく、
相手の防御を貫通することを目的とした拳。
「うらぁああああああっ!」
ほぼ本気の一撃を放った。
その一手は、バーチャの顔面をシッカリととらえた。
今回も、バーチャは、避けることすらしなかった。
バーチャの対応は同じだが、
今回、モナルッポの一撃には魂がこもっていた。
だから、『先ほどのヌルい一手』の時とは違い、
今度は、モナルッポの拳に、ガツンと強めの手ごたえが残る。
モナルッポの拳を顔面で受け止めたバーチャは、
軽く鼻血を出しつつも、強い目で、モナルッポを睨みつけ、
「……まあ……才能だけで言えば……あの閃光よりも、貴様の方が上だな」
などとつぶやいた直後、
「もっとも、あの閃光は、『異質』なだけで『無能』だったから、『才能だけ上回っている』という程度では、まったく話にならないが」
と、何一つ理解できない言葉を述べつつ、
「――凛打――」
しなやかに、
グリムアーツを、モナルッポの腹部にたたきこむ。
一見すると、ただの左フック。
だが、込められている努力量は想像を絶した。
「ぶへぁああっ!!」
内臓ぜんぶが口から飛び出すかと思った。
そのぐらいの衝撃が、モナルッポの感覚器官をうめつくす。
(な、なんという重たいグリムアーツ……たかが左フックひとつに、これだけの圧力をあたえるとは……こいつ、いったい、どんな鍛錬をつんできたんだ……)
バーチャと触れ合う時間が増せば増すほど、
モナルッポは、バーチャの底を見失っていく。
その『ありえない深み』に囚われそうになる。
ヘタをしたら、心が折れてしまいそう。
気をぬいたら、かしずきたくなってしまうほどの、遥かなる高み。
「――凛霊打――」
コンボ技が飛んでくる。
やっていることは、ただの左アッパー。
――なのに、どうして、そんなにも重たい?
「ぐへぇえぁああああっっ!!」
盛大に吐血する。
顎を砕かれて、首の骨にも甚大な損傷。