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69話 聖龍王国の文明レベルは想定外。


 69話 聖龍王国の文明レベルは想定外。


「――モナ様。そろそろ、聖龍王国の正式な領地に入ります。ここからどうするのですか?」


 そこで、モナルッポは、キッツに右手を向けて、


「擬態ランク23」


 『鬼の進化種』に見えるよう擬態をかける。

 ツノが生えて、体色や体毛が変質して、顔付きにも明らかな変化が生じる。


 低ランクの擬態では、すぐさま怪しまれてしまうのだが、

 これだけ高ランクの擬態であれば、上位者をダマすことも容易。

 現状の彼女が『ミルスのキッツである』とすぐさま理解できる者は、そうそういない。


 モナルッポは、さらに、自分にも同じ魔法をかけて、鬼の進化種に変装すると、


「いいか、キッツ。我々は、『先ほど進化したばかりの鬼種』という設定でいく。これまでに、ショデヒから聞いた聖龍王国の話が本当であれば、進化したばかりでも、能力さえ高ければ、すぐさま登用されるという。まあ、さすがに、『幹部グループの一番下』からのスタートにはなるそうだが」


 というわけで、モナルッポと、キッツは、存在値250前後の、それなりに優秀な進化種という設定で、聖龍王国に潜り込もうとした。


 聖龍王国の支配領域に足を踏み込んでから、

 だいたい2時間ぐらい歩いたところで、

 聖龍王国の城塞都市が見えてきた。


「……なっ……」


 広大な『北方の大森林』のちょうど中央に、

 聖龍王国の城塞都市は広がっていた。


「……どういうことだ……なぜ、こんなにも……」


 都市の文明レベルは、明らかに、ミルス王国を超えていた。

 規模こそ、ミルス王国の10分の1ぐらいで、さほど大きくはないが、

 しかし、それは、住民の数が少ないからであって、

 決して、規模を広げられないからではない。


(聖龍王国の文明力を侮っていた……まさか、ここまで……)


 感覚としては、半世紀ほど先の未来を見せられた気分。

 城壁、道路、建造物、街ゆく人々の装飾品などなど、

 一つ一つの水準が、明らかにミルス王国よりも上を行っている。


(エルメスを中心として、高位の魔人や進化種が集まっているのだから……それなりに箱のレベルも高くなるというものか……)


 生産系や建築系の魔法を使える者が多ければ、

 国という箱をつくるだけならたやすい。


 質の高い箱の中で、高ランクの民を働かせれば、国として循環が安定していく。

 最低限の土台ができれば、固有の文化が磨かれていく。

 宗教、学問、道徳、芸術。

 ――そして、裏社会の美学。


 どの国にも、『悪の組織(マフィアや邪教)』は存在し、

 それぞれが、それぞれなりの美学を守りながら、

 おのおのの命をまっとうしている。

 それは、この聖龍王国でも変わらない。

 裏も表も成熟していくことで、『文明』は底上げされていく。


(モンスターに、置き去りにされるとは……なんとも情けない話じゃないか……)


 心の中で、そうつぶやきながら、

 モナルッポは、行き交う人々の顔を確認する。

 印象の問題ではなく、事実として、

 この国に生きる民の方が、ミルスの民よりも表情が明るい。


 みな、今日よりもマシな明日がくることを信じている顔つき。



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