65話 機動魔法ランク20。
65話 機動魔法ランク20。
(こいつ……ランク20の魔カードを、ポンポンと簡単に使うじゃねぇか……まさか、本当に、量産体制が整っている? とんでもない話だ……こうなってくると、問題なのは、どのぐらいのペースで生産できるのか……もし、仮に、一週間に1枚ほどのペースで量産できるとすると……いや、さすがにそれはないか……)
自分の中の常識と照らし合わせつつ、
モナルッポは、未来を演算する。
(どのぐらいだったら、対処可能だ? 一か月に1枚ならば……うん……まだ、対処は可能。ただ、『半月に1枚以上のペース』で量産できるとなると……準備期間次第では、かなり厄介……聖龍王国は、非常に理性的な国家だが、これだけの力を持っているとなると、どういう動きに出るか分からない……命は強欲だから……)
などと、数秒の中で、爆速の思考を回転させていると、
そこで、ショデヒが、
「殿下。先ほどお渡しした魔カードを使ってみてください。そちらの魔カードの方が『封じられている魔法』のクオリティが上ですので、この強大な力を持った炎霊をも、たやすく屠ることができます。ちなみに、この炎霊は、レバーデイン殿下と、ほぼ同等の力を持っておりますよ」
「……兄貴と同じ? ……そ、そんな化け物に……俺が? 魔カード一枚で?」
「それだけの力が、その魔カードにはこめられております。さあ、どうぞ」
「い、いや、でも、俺、金が、そんなに……」
「お試しの初回サービスとして、そちらは無料でプレゼントさせていただきます。さあ、ぜひ、ランク20の魔カードの力をお試しください」
「……」
悩むふりをしつつ、心の中で、
(ついには『無料でおためし』ときたか。そこまでして俺に、この力を使わせたい理由……まあ、ある程度は予測がつくが……)
そうつぶやいてから、
「機動人形ランク20。――黒曜、出撃準備開始」
丁寧に詠唱しながら、魔カードをやぶり捨てた。
すると、モナルッポを中心として、地面に巨大なジオメトリが展開される。
そして、表示される。
『――マシンゴーレム、出撃準備完了』
起動開始の合図が表示されると同時に、地面に描かれたジオメトリから、無数の『魔法鋼パーツ』が、噴火したマグマのようにドワっと湧き上がってきて、ガチャガチャガチャッと、召喚者の体を閉じ込めるように組みたてられていく。
ほとんど一瞬のうちに、モナルッポの体を、全長五メートルほどの機械人形の中に閉じ込めてしまった。
さほど洗練されたフォルムではない。
ショボいオモチャと表現するのがベストの、まったくスマートさを感じないスタイル。不器用な子供がレゴ○ロックをテキトーにつなぎ合わせただけのような、ガラクタ感を醸し出している不細工な鉄人形。
しかし、そのブザイクな鉄人形に包まれたことで、モナルッポは激しい高揚感に包まれた。
(す、すさまじいスペックの機動魔法……これを自力で会得しようと思えば、天才である俺が数十年を積む必要がある……それを、誰でも使える魔カードに落とし込むとは……神をも畏れぬ大胆な諸行……)
破壊と殺戮の象徴、マシンゴーレム。
機体名は黒曜。
火力重視のハイスペックマシン。
――マシンゴーレムのランク。
D級、玉響「スピードだけはそこそこの低級機体」。
C級、星屑「オールラウンダーの中級機体」。
B級、龍鬼「耐久と火力がなかなかの上級機体」。
A級、黒曜「火力重視のハイスペックマシン」。
S級、煉獄「魔法性能に優れた魔力型ハイスペックマシン」。
SS級、神威「全性能が破格の超ハイスペックマシン」。