表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

197/1228

63話 ディティールにこだわる職人気質のモナルッポ。


 63話 ディティールにこだわる職人気質のモナルッポ。


(……1億でも安いな……『ランク20の魔カードの価値』は計り知れない……)


 などとモナルッポが思っていると、

 ショデヒは、


「900万テスほどでお売りしたいと考えております」


「……っっ?!」


 あまりの安さに驚きすぎて、一瞬、素の顔になりかけたが、

 奥歯をかみしめて、『アホの表情』を取り戻すと、


「アホか、高ぇよ」


 心の中では、


(……バカみたいな安価……そこまで値段を落としている意味は……)


 などと、ショデヒの心の内を探りつつ、


「お前、俺をバカだと思ってぼったくろうとしていやがるな。俺は確かに魔カードの詳細に詳しくねぇけど、最高品質のもので100万ぐらいってことぐらいは知っているんだ。あんまりナメんじゃねぇぞ。倍か、3倍がギリだろ。なんだ、900万って、バカか」


 などと、表面では『ものの価値が分からない愚者』を丸出しにしつつ、

 心の中では、


(……最初に安く売って、依存させてから値段を上げるというのは、薬なんかではよくある手法。もし、そのパターンだとしたら、聖龍王国が創ったランク20の魔カードは、この一枚だけではなく、他にも何枚かあると見た方がいい……とんでもない技術力……その知識と力は、是非知りたいところだが……さすがに、それを手に入れることはできないだろう……)


 高速で頭を回す。

 表面でバカを演じながら、心の中で高速計算に興じる――長年、訓練してきたこの技能では、誰にも負ける気がしないモナルッポ。


 ショデヒが、うやうやしい態度のまま、


「ランク20の魔カードの価値は、そこらの魔カードとは比べ物になりません。900万でも安いぐらいですよ」


「うそつけよ。900万という数字をナメんなよ。庶民なら20年暮らせるんじゃねぇか? 知らんけど」


 いくら庶民とはいえ、20年暮らすためには、最低でも2000万前後は必要。

 理想の王を目指し、一般常識に関する勉強もかかしていないモナルッポは、そのことも当然抑えているのだが、『その辺の感覚からしてあいまいなバカ王子』を演じるために、あえて、ここでは、20年という数字を選んで口にした。


 こういう、非常に細かいところでも、シッカリと、愚者を演じていく。

 ディティールにも精度にもこだわる職人気質な演技派。

 だから、誰も、モナルッポの本性には気づかない。


 ――ちなみに、キッツも、幼少期は、モナルッポのことを、本気でバカにしていた。

 モナルッポに『優秀である』と認められ、正体を明かされたからこそ、モナルッポの本質を知ることができたが、モナルッポから直々に正体を明かされていなかった場合、自力で気づくのは、何年かけようと、絶対に不可能だっただろう。


 モナルッポの、繊細な演技を尻目に、

 キッツが、


「900万だと、庶民でも、10年前後が限界だと思いますよ。最近は物価も上がっていますし」


 と、『モナルッポのバカっぷり』を、『正式な忠言』と言う形で、

 ショデヒに植え付けてから、


「モナ様、ショデヒ殿が言っていることに間違いはありません。確かに、ランク20の魔カードともなれば、それだけの価値はあるかと。むしろ、900万は、そうとう安いと思いますよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ