表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/1228

59話 ドーキガン・ザナルキアは、ただの変態。


 59話 ドーキガン・ザナルキアは、ただの変態。


『支配者には、君がなればいい……と、ボクは考えています。あなたにはそれだけの資質がありますから』

『……は、はは。何を言っているんだ。俺は、優秀な兄の出がらしにすぎないというのに』

『フェイクオーラに自信があるようですが、ボクのセブンスアイをごまかせるレベルではありませんね』

『……』

『ボクには、邪神を滅ぼすという、重要な仕事があります。世界の統治をしているヒマはありません』

『破滅の予言か……ドーキガン・ザナルキア……君は、あんなものを信じているのかい?』

『予言が事実か否かはどうでもいいんですよ。もし、事実だった場合、邪神に対抗できるだけの力がなければ、世界は滅びる。それは許容できない。それだけの話です』

『……なるほど。じゃあ、邪神を殺した後に王位を狙う感じかな?』

『別に、邪神に限らなくとも、世界のあちこちでモンスターが壊れて暴れることが多々あります。そういう厄介事を的確に対処できるエキスパートはいた方がいいでしょう。……ボクの仕事はそれです。絶望を裂く一振りの剣。それだけでいい。というより、専業でなければ務まらない。片手間でこなせるほど、王の仕事も、剣の仕事も、ヌルくはありません』

『ご立派な思想だが、しかし、君はそれで、何を得るんだ? 君は何が欲しくて、絶望を狩ろうとしている? 何が君の原動力だ? 王になることが望みではないというのであれば、君はなんのために戦っている?』

『輝く明日のため』




 ――ドーキガン・ザナルキアと会談した時のことを思い出すたび、

 モナルッポは、鼻で笑ってしまう。


(あいつは変態だ。警戒する価値のない相手)


 モナルッポは思う。

 あんな変態に気を取られるなどバカバカしい、と。


(あいつは、『俺でも対処できない化け物』が現れた時のための保険。それ以上でも、それ以下でもない。せいぜい、便利に使わせてもらうさ)


 ドーキガンと出会うまでのモナルッポは、

 漠然と『トップを目指す』という欲にかられていた。


 本能の叫びに従って、

 この世の全てを貪り喰らう獣になろうと思っていた。


 しかし、ドーキガンと出会って、モナルッポは、本能との向き合い方を知った。

 本人は決して認めないが、

 ようするには、がれたのだ。

 ドーキガン・ザナルキアの眩しさを前にして、安い本能が封殺された。


 『自分が本当に欲しいものは何か』と、真剣に『自分の欲望と向き合った時間』は、モナルッポの中で、かけがえのない宝物になった。


 それなりに長い時間をかけて、モナルッポは、自分なりの答えを得た。

 モナルッポが欲しかったものは、


(……完全なる王に、俺はなりたいのだ……)


 結局のところ、変わらなかった。


 自分の中に、深く、深く、深く、深く、潜ってみた結果、

 モナルッポは、『自分の渇き』が『原点』にあることを理解した。


 現状における世界情勢の不安定さはひどく醜い。

 人間も魔人も倫理的に不完全すぎる。


 ――モナルッポは思う。


(……とりあえず、当面の目標は、統一化による戦争の終焉……)


 長い目で見た時、戦争というのは、あまりにも非生産的すぎる。

 短絡的な視点で、短期的な結果だけに注視すれば、

 戦争で急成長を果たせる分野もあるだろう。

 それは否定しないが、しかし、長期的な視点で言えば、

 戦争は、やはり、非生産的な愚行と言わざるをえない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ