57話 モナルッポは、どうしようもないバカ王子?
57話 モナルッポは、どうしようもないバカ王子?
「モナルッポ……貴様、また研究会をサボったな……いい加減にしろ……」
「しかたないではありませんか、兄上。俺は生まれつき病弱で、今日も今朝から、持病の胸痛が酷く、ずっと、血を吐いておったのですから」
「では、その血を、今、ここで、吐いて見せてみろ。貴様が血を吐いたところなど見たことがないぞ!」
「王族として、人前で、そのような無様なマネをさらすことはできません」
「……」
あまりにナメ腐った態度を見せるモナルッポに、
兄であるレバーデインは、ギリギリと奥歯をかみしめて、
「とても王族とは思えないほど、武のセンスがなく、頭が悪く、態度も軽薄で、おまけに、研究会をサボる……なぜ、貴様は、そんなにもダメなんだ、モナルッポ……っ」
ミルトリス王家は『自分達が絶対的特権階級で在り続けるため』の努力が出来る王族。
より強く、より優れた存在に成長するため、定期的に開かれている『研究会』は、王家の血族が一堂に会し、致命傷を受けるギリギリまで手合わせをしたり、独自に開発した技能やアイテムなどの研究成果を発表したりしている。
研究会に参加するのは、もはや、王族の義務であり、よっぽどの理由がない限り、欠席は認められていない。
そんな研究会を、モナルッポは、『絶対に嘘だと分かる体調不良』で休みやがった。
現在、代表して、兄のレバーデインが叱りつけにきているが、
怒り心頭で顔真っ赤になっているのはレバーデインだけではなく、
親戚一同、ほぼ全員である。
「俺の存在値は200もあるのですよ。立派なものでしょう」
「ミルトリス王家に生まれた者は、みな、存在値300を超えている! お前の実兄である私にいたっては、550を超えているんだぞ! それを考えた上で発言しろ!」
「ミルトリス王家の歴史上『最高の存在値』を誇る兄上を引き合いに出されても困りますねぇ」
レバーデインは、歴代最高級の力を持つ天才である。
とてつもない才覚を誇るレバーデインがいるから、
ギリギリのところで、モナルッポの不真面目さが許さている、
という、そんな背景も実はあったりする。
『あれだけ優秀な兄と比べられる人生』は、さぞつらいものだろう。
――と、周りの親族は、モナルッポに対して、多少、同情もしている。
『まじめにやれ』と叱られながらも、
『仕方がない』と哀れみを受けてもいる。
それが、モナルッポの現状。
――兄に全ての才能を奪われた可哀そうな出がらし。
それ以下になることはありえても、それ以上にはなりえない無能。
「兄上、俺では、どれだけ頑張っても、兄上の足元にも及びません。そんな俺を、少しでも憐れに思うのであれば、ソっとしておいてくださいませんか。兄上のような偉大な次期大王の出がらしとして生まれて、俺も辛いのです。どうせ、俺のような無能が何をしたところで、結果は同じなのですから、俺のことは、どうか、『いないもの』としてあつかっていただきたく思っております」