53話 サシスセソ。
53話 サシスセソ。
「みんな、わざわざ集まってくれてありがとう。さっそくやけど、新しい聖龍王国の組織体制について説明していくで。エルメス、あとはよろしく」
任を託されたエルメスは、今後の体制について、たんたんと語っていく。
エルメスは、元々自分が王だったことはすっかり忘れて、
すっぽりと、Tの腹心の座についている。
エルメス的には、この状況が、一番シックリときた。
まるで、もともとはそうだったかのように、
『Tの所有物的なポジション』というものが、完璧にハマっていた。
新しい聖龍王国における一番上は、『T・104』。
その下に、宰相的なポジションの『エルメス』。
聖龍王軍の総大将に『バーチャ・ルカーノ・ロッキィ』。
その配下という形で、四人の魔将『ザラキエリ』『ショデヒ』『ガイリュー』『ラディエルノバーノイド』。
それぞれの下に、副将として、5人の華族が振り分けられる。
そして、その下に、兵隊として、総勢2000の魔人や進化種がついている。
「今後、我々の王は、この世界の創造主であり絶対的強者である、こちらの『聖主様』となる。文句がある者は手をあげろ。その場で焼き殺す」
そんなことを言われて手を上げる者などもちろんいない。
この場にいる全員が、もともとは、エルメスに対して絶対服従の状態だった。
圧倒的に強すぎる最強のドラゴン『エルメス』が白だと言えば黒でも白になる。
それが、この聖龍王国の在り方。
そこで、Tが、
「誰も文句はないようやな。ほな、今後は、ワシが王様ということで、アレコレやっていく。で、ワシが王様になったことで、何が変わるかを明確にしておこう。今後、聖龍王国は、この北の森に引きこもるんやなく、表舞台に出て、世界の全てを片っ端から征服していく。とりあえず、最初は、ミルス王国あたりを取っていこうかなと思うとる。同時進行で、カル大帝国にちょっかいをかけつつ、同時に、セア聖国にも手を伸ばそうと思うとる。で、その流れで、トーン、セファイルと落としていって、最後にフーマーをシバいて、北を統一。で、そのままの流れで、ゾメガとぶつかりあって、南を奪い取る、と。こういうわけや。何か質問は?」
そこで、五華族の一人、元火龍の魔人である『サーバン』が、
「聖龍王国がその気になれば、セアやセファイルのような小国は、どうとでもなるでしょうが、しかし、トーン、フーマー、カルのような列強が相手だと叩き潰されると思うのですが?」
そこで、五華族の一人、サーバンの弟である『シーバン』が、
「そもそも、我々のような魔物が、人の世界に踏み入れば、人間どもはすぐさま、合従軍をつくり、人類一丸となって、聖龍王国をつぶしにかかると思うのですが」
そこで、五華族の一人、シーバンの弟である『スーバン』が、
「合従軍など必要ないと思いますね。人の領域に踏み入ったと同時、人類最強の勇者『ドーキガン・ザナルキア』が出張ってきて、即座に叩き潰されるでしょう。聖龍王陛下はお強いが、かの勇者は、さらに一段階上の力を持っております」
そこで、五華族の一人、スーバンの弟である『セーバン』が、
「そもそも、北を統一してから南を相手にするというプランが成立しえないと思うのですが。北大陸の人類すべてを敵に回すということは、魔王国(オルゴレアム帝国)のゾメガも敵にまわすことも同義。魔王国は、どうやら、世界の安寧を求めているようですから、『身勝手な理由で戦争をはじめるような厄介な国』は、かつてのカル大帝国のように、ゾメガの制裁をくらうことでしょう」
そこで、五華族の一人、セーバンの弟である『ソーバン』が、
「もし、派手な行動を起こせば、北も南も含めた、すべての生命が敵になると考えた方が無難……そうなったとき、われわれに生き残る術はないように思える。我々は、弱者ではないが、圧倒的強者とも言えない。ドーキガンとゾメガ……この二名があまりにも強大」