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44話 気づかなかったなぁ……。


 44話 気づかなかったなぁ……。


「正義だの、悪だの、そんな概念は、振りかざした時点で、どちらも同じ醜いエゴになりさがる。貴様は、エゴを通せるだけの力もないくせに、正義を振りかざして他者を否定した。その行動こそが悪だ。悪や正義などどうでもいいが、一つだけ断言しよう。私も貴様も悪だ。そして、どちらの方が『より醜い悪か』と言えば『貴様の悪』の方が、圧倒的に醜い」


「……うぅ…うっ……あ、あんたなら……」


「ん? なんだ? まだ言いたいことがあるのか? いいぞ、聞いてやる。ただし、これが最後だから、すべての信念をこめて語れ」


「あんたの力があれば……誰も苦しまない……みんなが幸せに生きていける世界を……つくることもできる……」


「はぁ? なんだ、急に。なんの話だ?」


「それだけの……『規格外の力』があれば……完璧な世界だってつくれるはず……」



「もちろん、できるさ。私にとって、完璧な世界をつくることなどたやすい。ただ、できるかどうかと、やりたいかどうかは別の話。私は、自分自身を完成させることにしか興味がない。世界がどうなろうと知ったことではない」



「もし、世界を……理想郷に変えてくれるのなら……あなたの奴隷として、身を粉にして働くと誓う。永遠にして絶対の忠誠を奉げると誓う……だから――」


 最後のあがきを見せるザラキエリ。


「ははははは! 貴様のようなゴミカスなど、いらん、いらん、いらぁぁん!」


 心底おかしくてたまらない、という感じで、

 徹底的にザラキエリの発言を見下した笑顔を見せるバーチャ。


「私以外の誰がどう苦しもうと知ったことか。虫ケラの幸せなど考えたくもない。私にとっては、私が完成することだけがすべて。それ以外はすべて些事さじ


 そんな彼の発言を受けて、

 ザラキエリは、


「……これが……神か……なるほど……はっ」


 一度、鼻で笑ってから、


「……この世界は……最初から、終わっていた……」


 投げやりな態度で、そう吐き捨てた。


「殺せ、愚かな神よ。あんたが神をしている世界では生きていたくない」


「虫けらの分際で、超神である私に命令するな。不愉快きわまりない」


 そう言い捨ててから、

 バーチャは、ショデヒに視線を向けて、


「めざわりだ。このゴミを掃除しておけ」


 と、命令をくだした。

 ショデヒは、ニィっと『黒い花が咲いたような笑顔』を浮かべ、


「素晴らしいご命令を賜ったこと、心から感謝を」


 臣下の礼儀をつくしてから、

 ザラキエリの目の前まで優雅に歩を進め、

 彼女を見下しながら、


「ザラキエリさん、私の演技は完璧すぎるため、今まで気づけなかったでしょうけど、実は私、あなたのことが大嫌いなんですよ。死ねばいいのにと、ずっと思っていました」


「……奇遇ね。私もそう。気づかなかったでしょうけど」


 最後に、とびっきりの皮肉を口にするザラキエリ。

 すでに生を諦めている。

 生きる気力を見失っている。


「これから殺します。無駄な抵抗をしなければ、一撃で首を落としてあげますよ」


「見てわからない? 抵抗する気力なんて残っていない」


「それはけっこう。それでは、さようなら」


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