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42話 極論でも哲学。


 42話 極論でも哲学。


「悪か正義かという、0か100の話を持ち出してきたのはそっちだ。ならば、応える義務があろう? 特定の状況や心情に対してのみ悪や正義というくくりを持ってくるのは、あまりにも卑怯な行動だと思わないかね? 私の視点での悪とは、そういう『覚悟と品性のたりない、薄っぺらで卑怯な行為』をさす」


「……」


「私は、いつだって、まっすぐに答えるぞ。おのが信念を信じているから、どんな時でも、ぜったいに揺らがない。仮に、『私以上の力によって押しつぶされること』があったとしても、私は私の意見を変えることはない。他者から、『私の信念』に対する問いかけを受けた際に、言葉を詰まらせることは絶対にない。答えをはぐらかすことも、言葉遊びで逃げることもない」


「……」


「重要なことは、正義か悪かではなく、信念を通せるかどうか。その一点だけだ。手前勝手な基準で善悪をかたりだすから、世界は『愚かしい歪み』を見せてしまう。私の意見を押しつぶしたいのであれば、それ相応の力を見せろ。努力を怠っておいて、『権利だけ』をわめくな。弱者の権利など、この世には存在しない」


「すばらしい……」


 心酔した恍惚の顔で、ショデヒは拍手をしていた。


「まさに神の言葉。天の啓示。そう、まさしく、その通り。命とはそうあるべき。優等種のみが残り続け、劣等種を的確に排除しつづけることでのみ、命は未来をひらくことができる。それを否定するのは怠慢でしかない。この世で最も醜い甘え。優等種が劣等種を支える社会などあってはいけない。そのゆがんだ社会の先に待っている未来は、足手まといの弱者であふれかえったゴミ溜め。なんと醜い。なんと愚か」


 そんなショデヒの発言に対し、

 ザラキエリは、『言いたいこと』が山ほどある。


 だが、現状では、その言葉が通ることはない。

 なぜなら、この場におけるザラキエリは、絶対的な弱者だから。


 エルメスを一方的に叩き潰すことができるバーチャに対し、

 ザラキエリに出来ることなど何もない。


 何を言っても負け犬の遠吠えにしかならない。

 圧倒的な力量差がある相手と議論など無意味。

 強者の理屈でねじふせられてしまうだけ。

 そこに正解も不正解もない。

 信念も大義も関係ない。



 ――だから、ザラキエリは、強く剣をにぎりしめる。



「最終的には力を示すしかない……その意見にだけは賛成。いくら、たくみに言葉を使っても、思想のぶつかりあいに決着はつかない。お互いがお互いを正義だと思っていたら、折れることはないから」


「私は自分を正義だとは思っていない。そんな低品質の概念に固執したりはしない」


「なんでもいい。とにかく、意見を通すには戦争しかない。それが現実であることは私も認める」


 戦争とは『外交の失敗』である。

 妥協案を模索しきれなかった代償。

 ――それはそれで事実だが、そもそも『外交が成立していない』というパターンも存在する。


 今がまさにそう。

 対話しているように見えて、一切、言葉は交わされていない。

 明後日を向いた主張が平行線をたどっただけ。



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