37話 神種。
37話 神種。
「聖龍王であるこの私を下等生物呼ばわりとは……不敬がすぎるな」
「くく。上質なプライドじゃないか。まあ、貴様が『凝り固まったプライドを飼うに値する力を持っている』ということは認めよう。それだけの存在値を誇る貴様は、おそらく、この世界で最強の存在。殿堂入りした天帝を務めていることだろう」
バーチャはバカではない。
世界の相場ぐらいは知っている。
存在値700は、命の最高峰クラス。
「神と比べればカスだが、『現世のゴミ』基準でモノを言えば、貴様は、かなりの高みにある。全世界を見渡しても、貴様に勝てるのは、あいつと、あいつの配下ぐらいだろう」
そう言いながら、バーチャは、
一瞬で、エルメスの背後を奪い取り、
「――ただ、もちろん、神の頂点である私の相手は不可能」
そう言いながら、
エルメスの背中を、『第一左腕』で貫いた。
「ぐふっ!」
心臓を貫かれたエルメスは、白目をむいて、血を吐き出す。
「散れ」
そう言いながら、魔力をこめた。
さきほどのガイリューと同じように、エルメスの体を爆散させようとした。
――だが、その時、
「ん?」
バーチャは違和感を覚えた。
エルメスの体から、妙な『光の波動』を感じる。
「なんだ?」
不思議に思っていると、
パァアアアっと、何かが開く音が、
確かにした。
――この光景、バーチャには覚えがあった。
「おいおい……神種が開く場面など、めったに見られるものではないというのに……まさか、二度も、経験するとはな……」
やれやれと、首を横にふって、
エルメスから距離をとるバーチャ。
「どんなに珍しいシーンでも、二度目となれば、興ざめだな。あいつの開花だけで、十分、飽き飽きしている。こりごりしていると言ってもいい……まったく……」
心底、鬱陶しそうにそうつぶやいていると、
エルメスが、
「……こ、これは……この力は……」
と、新たに目覚めた自分の力に瞠目する。
そんなエルメスに、バーチャは、
「貴様の神種は芽吹き、めでたく神になった。よかった、よかった。まあ、だからといって、何も変わらないがな。神の力を現世で使えるのは、私と、あいつだけ。それ以外の特別は、もう許容できない」
と、バーチャがそこまで言ったところで、
エルメスは、全身に、膨れ上がったオーラを充満させていく。
膨大な力。
決して三桁には留まらない神の力。
それを目の当たりにしたバーチャは、
「……き、貴様も、か……まったく……」
忌々しそうな顔で、
「現世で神の力を使えるのは私だけの特権……だったというのに……何度も、何度も、例外が出てくるとは……まったく、まったく、まったく……いいかげんにしろよ……私の特別感が揺らぐだろうが……っ」
ギリっと奥歯をかみしめつつ、
バーチャは、全身に神気を充満させていく。
超神に届いた神の力を世界に見せつける。
「神になれてよかったな。神の力を現世で使えてよかったな。ああ、よかった、よかった。しかし、無意味なんだよ。なぜか。ここには私がいるからだ。神を超えた神。超神バーチャ・ルカーノ・ロッキィ。その高みを、正式に教えてやる」