36話 命の最終結論。
36話 命の最終結論。
「……て、てめぇは……聖龍王陛下の剣である俺をバカにした……その罪を……教えてやる――死ねぇええええっ!」
豪速で距離を詰めて、力こそパワーだと言わんばかりに、
膨張した自分自身を、『彼』へと叩き込もうとする。
ガイリューの突撃をどう対応するか、
それを見てから対策を考えようとしているエルメスの目に、
衝撃的な光景が飛び込んでくる。
まず、最初の衝撃は、『彼』が、ガイリューの一撃を受けても、微動だにしなかったこと。
「存在値三桁のカスが、超神である私に歯向かうな、みっともない」
次の衝撃は、
『彼』が、ガイリューの体に、ソっと触れただけで、
ガイリューの肉体が、バラバラに弾け飛んだこと。
ほんの一瞬で、高性能のシュレッダーにでもかけたみたいに、
こまかくバラバラにされてしまったガイリュー。
血しぶきが舞って、粉砕された骨がパラパラと降り注ぐ。
「私は超神バーチャ・ルカーノ・ロッキィ。神を超えた神。つまりは、命の最終結論。現世のカスは、私の足元にひれ伏し、心の限り、慈悲を請え」
そんな彼に、
エルメスは、
「バーチャ・ルカーノ・ロッキィ……今、貴様は、ガイリューを……殺した……のか?」
それすら理解できていない。
『殺したのだろう』とは思っているのだが、
『ソっと触れただけで爆散した』ため、
何がなんだか分からなかったのだ。
ガイリューは、火力と防御力が高い前衛戦闘職。
エルメスが本気を出したとしても、さすがに、一瞬で殺すことはできない。
だから、現実が飲み込めない。
まるで、あやふやな夢の中。
そんなフワフワした状態になっているのはエルメスだけではない。
ここにいる全員。
ガイリューの強さを知っている親衛隊&配下の面々は、
今、目の前で起こっていることに対し、
『夢である可能性』の方が高いと思っている。
――そんな彼・彼女らに、
バーチャは、堂々と言い捨てる。
「……この私に牙をむくような真正の愚者は、もちろん、殺す。ま、そうでなくとも、最終的には皆殺しだがな」
「皆殺し? ……な、なぜ、そんなことを……」
「さらなる高みを目指すため」
「……」
「感じるのだ。……本能で理解している。私は、まだ道の途中。私の中には、きっと、『まだ先』がある。神を超えた神……その先……」
貪欲に、強欲に、一心不乱に、
バーチャは『先』を追い求める。
「すべての命をくらいつくし……私は、『完成した最果て』となる。光栄に思え。貴様らは、その糧になれるのだ」
「理不尽に殺すと言われて、黙って受け入れるとでも?」
「受け入れるしかない。この私の前では、貴様らのような下等生物は何も出来ない」
「聖龍王であるこの私を下等生物呼ばわりとは……不敬がすぎるな」
「くく。上質なプライドじゃないか。まあ、貴様が『凝り固まったプライドを飼うに値する力を持っている』ということは認めよう。それだけの存在値を誇る貴様は、おそらく、この世界で最強の存在。殿堂入りした天帝を務めていることだろう」