34話 『すべてを滅ぼす魔』が封じられている箱。
34話 『すべてを滅ぼす魔』が封じられている箱。
「私には、この箱を管理するという役目もある。人間やモンスターと遊んでいるわけにはいかない」
「あなた様ほどの超越者が、そんな『見た目がイカついだけの、特に何でもない箱』に縛られて、おもてだった行動ができずにいるなど……なんと、もったいない話なのでしょう」
「……『何でもない箱』ではない。この中には、『すべてを滅ぼす魔』が潜んでいる」
「確かに、邪悪な気配を放ってはおりますが……これまで、ずっと、何も起こらなかったではないですか。『定期的に化け物が這い出てくる』――とかなら、まだ話も分かるのですが……本当に、ずっと、ずっと、ずっと、何ひとつ起こらないではないですか。ハッキリ言いますけれど、それは、ただの箱ですよ。四六時中はりついて管理する必要などないと思われます」
「これまで出てこなかったからといって、明日も出てこないとは限らない。明日どころか、今日出てくる可能性だって――」
と、エルメスが、そこまで言った時点で、
『まがまがしい箱』が、カタっと揺れた。
この場にいる全員の背筋に緊張が走る。
これまで、うんともすんとも言わなかった箱が、
突如、動き出したら、誰だって、動揺するだろう。
「まさ……か……本当に……今日……」
エルメスが、みけんにシワをよせながら、そうつぶやく。
玉座から降りて、箱から距離をとる。
エルメスの動きに合わせるように、
この場にいる配下たちも、箱から距離をとった。
「全員、迎撃態勢をとれ。……何が出てくるか知らんが、私に匹敵する化け物である可能性は大いにありえる。……その場合、私一人で倒すのは困難を極めるだろうが……この日のために、強者である貴様らを集めておいたのだ。存分に、力を示せ」
エルメスの命令を受けて、その場にいる全員が、勢いよく返事をする。
もともと、そういう契約なので、誰も反発する者などいない。
――と、その直後、
謎の箱は、
ガタァァンッ!
と、豪快な音をたてて、勢いよく開かれた。
そして、その中から、
「……ぷはぁ……」
水面から顔を出したかのように、
深い呼吸をしながら、
その男は、箱の中から這い出てきた。
翼の生えたイバラの冠。
左腕は三本で、右腕はない。
顔は小さく、けれど、背は非常に高い、10頭身ボディ。
見た感じ、非常に細身なのだが、しかし、実のところ、かなり筋肉質。
その男は、何度か、深呼吸をしてから、
ギラつく視線で周囲を確認しつつ、
(ここは……第二アルファ? いや、違う……コードがまったく違う。というか、私は、『あいつの異次元砲』で死んだはずでは……まさか、蘇生した? いや、この感じは違うな……ちっ……記憶に妙な制限がかかっている……あいまいにしか思い出せない……鬱陶しい……なんだ、これは……)
心の中で、ボソボソと、
(まあいい……それよりも……ここは、どこだ……こんなコードの世界は知らんぞ……どこかの神が新しく創った世界か? ……いや、新興の世界にしては、命の循環率が、妙に高い……)