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32話 眠たいことをいうザラキエリ。


 32話 眠たいことをいうザラキエリ。


「ショデヒ。俺がその気になれば、貴様など、一瞬でひねり殺せる」


 ――今にもとびかかりそうな覇気を垂れ流しながら、

 ガイリューは、ショデヒとの距離を一歩つめて、


「先の侮蔑ぶべつを撤回しろ。さもなくば殺すぞ」


「もうしわけありませんが、『アホに下げる頭』は持ち合わせておりません」


「ショデヒぃいいっ!」


 叫びながら、ショデヒに殴り掛かったガイリュー。


 それは直線的な動きだったし、最初から行動が読めていたので、

 ショデヒは、サラっと、ガイリューの攻撃を回避して、

 『会話中に溜めておいた魔力』を両手に込めて、


「異次元――」


 凶悪な照射の魔法を放とうとした、

 が、そこで、




「……うるさい」




 腹の底に響く強い声が耳に届き、

 ショデヒは、体をビクっとさせた。


 声の主は、彼らの王エルメス。

 圧倒的な力を持つ龍族の頂点。


 エルメスに睨まれたショデヒは、


「……いえ、あの、本気で撃つ気はありませんでしたよ? おたがい、ちょっとした冗談ですとも、もちろん。ね、ガイリューさん」


「……あ、ああ、もちろん」


 エルメスに睨まれれば、誰もゴチャゴチャ言えなくなる。

 エルメスの高みは次元が違う。


 ショデヒも、ガイリューも、存在値400以上。

 どちらも、普通の世界では『魔王』になれる器の持ち主だが、

 エルメスの前では、一配下に成り下がる。


 そこで、それまで黙ってことのなりゆきを見ていた『背中に羽が生えている女性』が、


「罪のない命を滅ぼそうとするなど、私は絶対に許さない」


 などと、そんな眠たいことを口にした。


 彼女の名前は『ザラキエリ』。

 聖龍王親衛隊の一人で、バードマンの進化種。

 バードマンは、自然種の中級モンスター。

 無意味な破壊や殺戮を好まない自然界の仲裁者。

 『進化前のランク』は、種族も階級も、ショデヒやガイリューより下だが、

 現時点での存在値では、ほぼ同列。


 そんな彼女に、ショデヒは、笑顔を向けて、


「ザラキエリさん。あなたのその『下劣げれつな思想』が、私は大嫌いです」


「私も、あなたの『性根の腐ったところ』が死ぬほど嫌いよ」


「腐っているのは私の性根ではなく、あなたの考え方である、ということに、さっさと気づいていただきたい。やれやれ、まったく……これだから、知性の足りていない『下等な進化種』と話すのは嫌なのです」


「私のことを、いくらバカにしてくれても構わないけれど、その行為の先に何があるのか教えてもらえる? 私は確かに、龍や悪魔と比べれば知性の面で劣るけれど、『他者を貶める行為に生産性がないこと』ぐらいは理解できる」


 ショデヒの邪悪さにひるまず、

 ザラキエリは、バチバチの視線と言葉で返す。


 さきほど、エルメスから『うるさい』と正式に怒られたばかりなので、どちらも、殴り合いをはじめることなく、静かににらみ合っているだけだが、もし、この場に、エルメスがいなかったら、普通に殺し合いをはじめているだろう。


 聖龍王親衛隊の面々は、それぞれが突出して優れた『力』と『思想』を持つため、

 ――全員、一律に、仲が悪い。



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