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30話 聖龍王エルメスの使命。

本日の2話目です。


 30話 聖龍王エルメスの使命。


 ――エルメスは、ヒマをもてあましていた。


 やるべきことはあるのだが、

 したいことは特にない。

 ただ、毎日が、漠然と過ぎていく。


 エルメスには、『生まれた時から把握している使命』がある。

 自分の背後、玉座の階段のてっぺんにある台座にセットされた『まがまがしい箱』の管理者という役目。

 『とてつもない魔』が封じられているらしい、その妙な箱を見守ることが、エルメスの生まれながらの使命。


 なのだが、しかし、この箱は、別に、何が起こるでもなく、いつまでたっても、うんともすんとも言わないので、結果的に、エルメスは、やることがなかった。

 この箱を封じるために、魔力を注がなければいけない――とか、そんな日課でもあれば、また話は別なのだが、特に何かをする必要もない。

 毎日、特に何も起こらない箱を見守るだけ。

 ――それが、エルメスの役目。

 ハッキリいって、たいくつきわまりない。



 ★



 ――北大陸の中で、唯一、この森にだけは、定期的に、高位のモンスターが発生する。

 非常に強力な鬼や悪魔が湧くこともあるのだが、

 エルメスがその気になれば、どれもワンパンで沈めることができる。


 エルメスの強さはぶっちぎり。

 相手になるのは、ドーキガンとゾメガぐらい。

 裏でひそかに、その両名と同盟を組んでいるエルメスにとって、

 日々の生活の中で、命の危険というものは存在しない。


 北方の森は、南大陸ほどではないが、かなり資源が豊富なので、

 食料などに困ることもない。


 かつては、愚かな人間の国家が、森の資源を求めてせめてきたこともあったが、

 何度か全滅させてやったことで、人間側から、

 『今後、この森には関わらないので、人間の世界にもこないでほしい』

 と、申し出があり、エルメスはそれを受け入れた。


 人間の軍も、それなりに強く、

 正面から、ガチンコでやりあえば、

 聖龍王国が負ける可能性も十分にあるのだが、

 しかし、森というホームで防衛線をする限りにおいて、

 聖龍王国が負けることはなかなかない。



「聖龍王陛下、退屈されているご様子ですね」



 聖龍王親衛隊の一人『ダークナイトの進化種』である『ザバメット・ショデヒ』が、

 いつもの、腹黒そうな笑顔で、そう声をかけてきた。

 ちなみに、ダークナイトは、悪魔種の上級モンスター。

 悪魔は、知性と魔力が高いのはいいが、とにかく性格が悪いことで有名な種族。


「ここは一つ、人間の世界を滅ぼしてみる……など、いかがでしょうか? きっと、いい暇つぶしになると思いますよ」


 ニチャァっと、粘質性の笑みを浮かべて、そういうショデヒ。

 そんな彼に、エルメスは、


「人の世界に興味などない。滅びようが、栄えようが……どうでもいい」


「滅びるのは大歓迎なのですが、栄えすぎるのは問題があるかと。人の数が増えれば、ドーキガン・ザナルキアのような厄介な種が芽生える可能性が増えるわけですから」


 聖龍王国も、一枚岩ではない。

 思想一つでまとまる国など存在しえない。

 王、幹部、国民、それぞれが、それぞれの考え方をもっている。

 ゆえに、『誰もが同じ方向を向く』などありえない。

 知性ある命は、必ず、『永遠に終わらない衝突』と『わかりあえない誤解』の中で、もがき、あがき、苦しみ続けなければいけない。

 当たり前の話。



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