23話 リグを追い詰める地獄の二択。
23話 リグを追い詰める地獄の二択。
「生きたいの! あなたと一緒に! 今後も! だから、折れて! お願いだから!」
「……」
基本的には、リグが主導権を握っているチームなのだが、
こういう、極限の土壇場においては、ラーバの方が発言権は強くなる。
二人にとってはいつものこと。
暴走するリグを止めるラーバ。
ゴ○とキ〇アの関係に似ていなくもない。
「……ぐっ……ご、50年……奴隷をしろってのか……ラーバぁ……」
「いま死ぬよりマシ……」
「ぐっ……ぎぃ……」
そこで、センは、リグに向かって、
「契約内容を変える。『女を殺し、お前だけ奴隷にする』か『二人とも奴隷にする』か。結末は、その二つだけだ」
「ぁ?」
「リグ、お前が、どっちか選べ。そっちの女に選択肢は与えない。決定権はお前にだけある」
「……」
「もし、まだ、無謀にも『俺に立ち向かってくる』というのなら、そっちの女――ラーバだけ殺して、お前のことは、鎖につないで、強制的に奴隷にする」
「……」
「――もし、『素直に奴隷になる』ことを選択するなら、そっちの女も生かしてやる。好待遇で飼うつもりはないが、最低限以上の生活レベルは保証してやる」
「……」
「自業自得だ。俺のことは放っておけばよかった。もっと言えば、南大陸にくるような愚かしいマネをしなければよかった。――若いうちに、いい教訓を得られてよかったな。今日の経験は、今後の人生で、大いに役立つだろう。敵意や害意を考え無しにふりかざすと、手痛いしっぺ返しをくらう可能性がある」
「……」
「選べ。お前の人生における最大の選択だ。20秒くれてやる。はい、20……19……」
「ぐ……ぅう……」
モンスターは悪であり、悪は絶対に許さないというスタンスをとっているリグは、
センの提案を受け入れることが出来ない。
まだ子供だが、意地と誇りだけは、それなりに上質。
そして、
(俺だけが死ぬなら、まだいい……だけれど……)
そこで、リグは、ラーバに視線を送った。
彼女は、まっすぐに、リグの目を見ていた。
別に何も言わない。
さっきまで、センに対して、あれだけ弁をふるっていたのに、
今は、ただ、まっすぐな目で、リグを見つめている。
(……そんな目で俺を見るなよ……くそったれ……)
歯ぎしりしながら、リグは、
(俺にも……ラーバにも……『どでかい才能』がある……あと、数年……いや、数か月も努力すれば……この『元ゴブリン野郎』を殺せるだけの力を会得することもできるはず……誰が50年も奴隷してやるか……数か月だ……数か月以内に、こいつを超える……そして、また、自由な冒険者に戻ってやる……)
心の中で、決断を下したところで、
ちょうど、センのカウントダウンが0になった。
「答えは?」
「……奴隷に……なる……だから……ラーバは殺すな……」
「奴隷の態度じゃないな。言っておくが、今後、反抗的な態度を取ったら、女の方に罰を受けてもらうからな」
「あ? 罰をあたえるなら、俺に直接――」
「ダメだ。信念を持っているヤツは罰にも脅しにも屈さないから」