15話 邪魔なセン。
15話 邪魔なセン。
思いっきりミシャに切りかかるリグ。
しかし、
「うぉお!」
ミシャの体を『オート』で覆っている『バチバチの邪悪オーラ』に阻まれて、近づくことができなかった。
それを見たミシャは、
「……も、もっと……強く、おさえつけ……ないとダメか……ま、待って……がんばるから……」
そう言いながら、
ミシャは、血の涙を媒体にして、するどいナイフを生成すると、
それで、自分の眼球をぶっ刺した。
「ああああああああっ!」
と、悲痛な叫びが空間をおおいつくす。
その後も、ミシャは、必死になって自分を痛めつけている。
その様を見て、センは、
(……バカだ……バカがいる……)
心からそう思った。
『世界を守るため』に『必死になって自分を殺そうとしている彼女』に対して、
センは、
(……どうしようもなく惨めで、無様で……でも、だからこそ……)
心がギリギリとしまってくる。
まるで、ひねりつぶされているかのように……
(……なにより、美しい……)
そんなことを思っていると、
リグが、
「よし! 闇属性のバチバチが弱くなってきた! ラーバ、バフをかけろ! 一気に首を落とす!」
「了解!」
ミシャが死ぬほど頑張った結果、
リグの剣が、ミシャに届きかけていた。
その状況を見たセンは、
思考を放棄して、駆け出していた。
自分でも、自分が何をしているのか理解できていない。
そんな、ボロキレのような状態のまま、
センは、リグにタックルを決め込んでいた。
なけなしのオーラを一極集中させて体当たりだったので、
相手を軽く吹っ飛ばすぐらいのことはできた。
「っ――あぁ?! 何しやがる、クソゴブリンが!」
ダメージなどは受けていない。
軽くノックバックされただけ。
怒りをあらわにして、剣を構えるリグ。
「状況が理解できていない低能が! 今は、てめぇの相手をしているヒマねぇんだよ!!」
そう言いながら、リグは、センに切りかかった。
その動きが、今のセンには、驚くほど『ゆっくり』に見えている。
先ほどとは次元の違うレベルで、脳がキレッキレになっていた。
なぜかは分からない。
分かりたくもない。
その理由を考えることすらダルかった。
「ギギッ!」
奥歯をかみしめて、
モンスターの声で、気合を叫びながら、
必死になって、リグの攻撃を、いなそうとする。
極限の集中力を発揮したセンは、
リグを、グルンと、完璧に転ばせてみせた。
「ぐぅうう!」
転ばせただけ。
地面にたたきつけたわけでもない。
ダメージは皆無。
だから、当然、
「くそがぁ! なんで、急に動きがよくなってんだ、てめぇ!」
そう叫んでから、リグは、
「その邪神を殺さないと、てめぇも死ぬんだぞ! まあ、言っても、わかんねぇだろうけどなぁああ! とにかく、邪魔すんなよ、カスがぁああ!」
『リグの叫び』を囮にして、
ラーバが、センに『剣矢』の魔法を撃ってきた。
そのムーブはすでに読めていたので、
センは、あっさりと矢を掴んでみせた。
「っ……ぐぅ! 鬱陶しいな、ド畜生! これだから、バカなモンスターは嫌なんだ!」
そこで、ミシャが、
「じゃ、邪魔しないで……私は……死にたいの……っ」
と、センの背中に声をかけた。
そして、邪悪なオーラを操って、
センを軽く吹っ飛ばす。
「ギギ!」
センが吹っ飛んだところで、ミシャは、
「はやく! 私を!」