14話 太古の予言。
14話 太古の予言。
「え、捕獲する気?」
「ちょうど、ああいう童顔の美少女型モンスターを高値で買ってくれる貴族の知り合いがいるんだ……間違いなく、数百万単位の金にはなる……それだけあれば、最高位のマジックアイテムで身をかためられる……つまりは、10つ星に、かなり近づける!」
などと、皮算用・銭勘定をしている二人を尻目に、
センは、
(……また、とんでもなくエグいのを召喚してしまった……これは、今の俺の手に負える代物じゃねぇぞ……つぅか、異世界とかあるのかよ……まあ、俺が、こんだけ簡単に世界を創ったんだから、他にも、世界を創ったやつがいてもおかしくねぇか……)
色々な思考が、頭の中を行ったり来たりしている。
(――てか、『殺して』って言われてもなぁ……そもそも、俺みたいなゴミが、こいつを殺すとかできるのか? 『世界を一つ終わらせるような化け物』だぞ……そんなもん、レベル1のゴブリンにどうにか出来るとは思えないんだが……でも、放置はできねぇよなぁ……これ、下手したら、バグが来る前に、世界が終わるぞ……つぅか、もしかして、こいつがバグの親玉的なアレか? ――わかんねぇ。無駄な情報ばっかりで、必要な情報が少なすぎる……)
などと、色々と考えていると、
「う……うぅ……」
と、ミシャが苦しみ始めた。
「もう……おさえられ……ない……うっ……ぐぅううううっ!」
そこで、ミシャは、自分の腕にかみついて、
ギリギリィっと、腕の肉をすりつぶしていく。
血がだらだらと溢れている。
とてつもなく猟奇的な光景。
ミシャは、センに視線を向けて、
血だらけの口で、泣きながら、
「はやく……ころ……して……」
あまりにも痛々しい、その姿に、
センは、
「………………ちっ……」
鬱陶しそうに舌を打つ。
頭の中が、グチャグチャになっていく感覚。
合理的な判断が溶けていく。
『ほとばしる感情』という熱だけで頭がパンパンになる。
そこで、ミシャは、
「……くっ……」
センのことを使い物にならないと思ったのか、
リグとラーバに右手をむけて、彼らの頭の中にも、自分の情報を叩き込んだ。
すると、
「えっ……なに、これ……頭のなかに……」
「世界を滅ぼした……異世界の邪神?」
「リグ……これって……もしかして、予言の?」
この世界には古くから伝わる予言がある。
『いずれ、この世界は、異世界から襲来する邪神に食い尽くされる』というもの。
その予言は、この世界において『ノストラダムスの大予言』ばりに広まっており、
かつ、その予言の信憑性は『非常に高い』とされている。
「やばいよ、リグ……もし、あの魔人が、本当に、予言の邪神だとしたら」
「落ち着け、ラーバ、むしろ、チャンスだ……金儲けは出来なくなったが、かわりに、英雄になれるチャンスがきた。あいつを殺せば、俺達は、余裕で10つ星……世界を救った英雄になれる」
リグは、剣に力を込めて、
「一世一代の大チャンスだ! 邪神を殺して首を持ち帰る!! そして、俺達は稀代の英雄になる!」
そう叫びながら、
懐から、一枚の魔カードを取り出し、
「――とっておきの切り札だが、ここが使いどころだよなぁ!」
破り捨てながら、
「鬼剣気ランク15!!」
それは、ゴールデン・ドラゴンハイドを使ってキラ化させた魔カード。
リグにとっては最大最強の切り札。
『今の自分』に可能な『限界』をぶちこんでいく。
最大級まで『剣の力』を高めてから、
リグは、思いっきりミシャに切りかかる。
しかし、
「っ――うぉお!」
ミシャの体を『オート』で覆っている『バチバチの邪悪オーラ』に阻まれて、近づくことができなかった。