8話 『ゴブリンセンエース』VS『リグ&ラーバ』。
8話 『ゴブリンセンエース』VS『リグ&ラーバ』。
(まずい……エンブレムから察するに、あいつらは8つ星の冒険者……存在値は、およそ250……今の『完璧なカス』でしかない俺じゃあ、どうしようもねぇ……)
リグとラーバは、どちらも、まだ12歳前後と、かなり若いが、
しかし、実力は、なかなか目を見張るものがある。
『8つ星』の領域に届くのは、山ほどいる冒険者の中でも、上位2%だけ。
この二人は、本物の実力者。
先ほどの小虫とは次元が違う。
際立って優れた二人組。
(逃げるか? いや、逃げたら、背中から撃たれる……存在値250二人から逃げきれるだけの俊敏性は持ち合わせてねぇ……かといって、闘ったら、秒で殺される……え、どうしよう……詰んでいるんだが……)
リグとラーバが、どんどん近づいてくる。
あの二人に慈悲を請うても無意味だろう。
そもそも、意志疎通が厳しいので、慈悲を請う事すら難しい。
(どうする……どうする……)
答えが出ないまま、
「こいつか」
センは、二人に見つかってしまった。
「雷ゴブリンだね……」
「確か、雷撃が使えるんだったか?」
「うん。けど、ランクは1か2が精々だと思う」
「突然変異って感じでもねぇし、問題はなさそうだな」
『南大陸のモンスターは北大陸のモンスターよりも強い』ということを理解している二人は、ゴブリン相手でも、しっかりと観察をしていく。
そして、『完璧にただの雑魚だ』と理解できたところで、
「やかましい断末魔で、他のモンスターを呼ばれても困る……一瞬でしとめるぞ」
「了解」
結論を出した二人は、迅速かつ的確な動きで、
センを叩き潰そうとした。
完璧な動きだった。
長年の鍛錬を経た動き。
見事なコンビネーション。
無駄のない的確なムーブ。
――だからこそ、センには、すべてが見えた。
戦闘思考力が反射レベルで最適解を出す。
急接近してきたリグとラーバの連携。
その猛攻連撃の中に見つけた、たった一つの安全地帯。
センは、完全なる反射で、その安地へと身を投じる。
身体能力の問題で、アクロバティック回避のような、難易度の高いマネは出来ないが、ぬるりと、半歩分の動きで、安地に溶け込むぐらいはできなくもない。
さっきの虫は、『思考を介していない不規則な動き』だったため、避けるのが難しかったが、『直線的な動きをする人間』が相手なら、ギリギリ、避けることも不可能ではない。
「――っ?」
「――っ?!」
回避された――と、認識したと同時、
リグとラーバの中で、警戒心が高まった。
だが、まだ臨界点は超えていない。
「……マグレか?」
「……たぶん……」
現段階では、まだ、『センの異常性』を完全把握することはできない。
まだまだ、『ただのマグレである線』は残っている。
リグとラーバは、意識のシフトを切り替える。
『本気モード』ではないが、『そこそこの警戒モード』で戦闘プランを組む。
まず、サポート魔法の適正が高いラーバが、
「呪縛ランク8」
『呪縛』の魔法でセンの動きを封じて、
その隙を、リグが『接近戦でついていく』という戦法。
シンプルだが、力の差がある時は『シンプル』であればあるほど効果的。