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62話 理想の未来を求めて。


 62話 理想の未来を求めて。


「究極まで進化した科学と比べれば、ぶっちゃけ、魔法とか、死にスキルやからな。『ボタン一つで誰でも恩恵を受けられるテクノロジー』と『限界を超えた鍛錬を経た個人にしか扱う権利がない魔法』では、比べることがおこがましいレベル」


「だからこそ、進化の速度が緩やかになって、人間の倫理的完成を待つことが出来るんじゃないか?」


「倫理的な完成は永遠に起こらんというんがワシの結論やな。生命の進化は今ぐらいでとどめて、やんわりと、死と生を循環させとくんが、一番ええと思う。これ以上を求めるんは、ワシ的に、ナンセンスと言わざるをえん」


「お前の意見なんか知るか。俺は見たいんだよ。こいつらの先を」


 そう言いながら、センは、熱心に『この世界に生まれた命』を観察する。

 『己のワガママによって生み出された』という絶対的前提があるせいか、

 まるで、『子供に対する情』みたいなものが、センの中で芽生えていた。

 ジャミたちに抱いた感情と同等――ではないが、近い何かは感じている。


 それは、すなわち、『命に対する責任感』である。


「可能性を示すのが親の役目だ。無理そうだからって、簡単に放棄するんじゃねぇ」


「……『適切な助言』をするんがサポートAIの役目や。AかBかの選択肢を前にしたとき、どっちが合理的かを正確に明示すること。それがワシの仕事であって、それ以外の判断はそっちの仕事。放棄もクソもないわ、ボケが」


「自分はAIでしかないと言う割には、ずいぶんと感情的じゃねぇか」


 バチバチとにらみ合う両者。

 根本的に、ソリがあっていない二人。


 正反対なのに、どこか似た者同士。

 だからこそ、腹立たしい――そんな、複雑な感情論。


 ――センは、


「この世界に未来を示す。手伝え、T・104」


 頑固に、自分の意見を押し通す。

 その選択が正しかったかどうかは誰にも分からない。



 ★



 結局のところ、T・104は『センエースが望んだ全て』を実行にうつした。

 もともと、Tに決定権はない。

 いつだって、『責任の全て』は、センエースが背負っている。


「……魔法とモンスターの存在によって、進化の速度は急激に停滞したな……おい、T……こんなペースで、『理想の未来』に辿り着けるのか?」


「まずは、『理想の未来』を定義してもらうところから始めてくれる? そうやないと、なんも答えられへん」


「理想の定義は、アレだ……『なにもかもが、なんかしら完璧な世界』だよ」


「ムチャクチャをほざくんも大概にせぇよ。なんもかんも完璧なもんて、そんな矛盾の塊みたいなもんが、この世に存在してたまるか、アホんだら」


「不可能だと嘆く前に手を動かせ」


「腱鞘炎がスタンバっとるレベルで、ずっと、エアキーボードをいじくっとるやろがい! おどれ、目ぇ、死んどんのか?!」


 クライアントの無茶なオーダーに従って、

 T・104は、休むことなく、ずっと、世界の調整を行っている。


 死ぬほど頑張ってはいるのだが、

 虚理を組み込んだ世界を安定させるのは非常に難しい。


「セン。おどれも、呑気に観察するだけやのうて、なんか手伝えや」


「出来るなら、とっくにやっている! けど、お前のやっていることは、難しすぎて、何がなんやら、さっぱりわからねぇんだよ、カスゥ!」


「ついに、本音を言いやがった……さっきまでは、しつこく、ヒザを盾にしていたくせに」



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