61話 この外道!
61話 この外道!
「Tさん、新しいアプリが解放されたぞ。これで、アレがアレできるな。やったぜ」
「おお、やっときたか。それがなかったら、さすがにダルすぎるからな。一々、脳のシステムをパッケージなしの手動とか、やってられへん」
「まったくもって同意見だ。あれ? もしかして、お前、俺の心を読んでる? やめてくれる? そういうことするの。俺の手柄を奪って楽しいか? この外道! 人外知性! メガフーデ○ンのゲンシカイキ状態!」
「……ちょっと、しばらく黙っとける? ここから、ガチで頭使うから」
新たなアプリのインストールによって、
行き詰っていたCPUのバージョンアップまで達成できたため、
生命は、さらなる時代への扉をこじあける。
――生命は、爆発的に進化していく。
★
そこから先も、センとTは、ずっと、世界を見守っていた。
時折、アプリが解放されるので、それも上手に使いながら、
二人は、人類の進化を見届ける。
そうやって、人類が、ある程度の進化に達したところで、
「これ以上はやめといた方がええな……」
ふいに、T・104が、ボソっとそう言った。
「は? なんで? ここからようやく、進化が成熟しだして、飛行機とか、車とか、コンピュータとか、そういう、漫画みたいな超未来テクノロジーが生まれそうやのに」
「同時に、厄介な兵器も生まれてまう。これ以上の急速な進化は、人間の『自制心の限界』を超えとる」
「……」
「……『倫理の不完全性』がエグい今の人類に、これ以上の進化を促すんは、あまりにも危険……おそらくやけど、すぐに、でかい戦争をおこして全滅するやろう」
「戦争ねぇ……まあ、そうねぇ……」
センは、賢くないが、バカではない。
本の知識にはなるが、ありとあらゆる『戦争の歴史』は頭に入っている。
「……でもなぁ……」
センは考えた。
こんなところで、人類の進化を止めたくはなかったから。
センは、未来を求めている。
もっと先に進んだ人類。
――技術も倫理も、すべてが限界を超えた、夢のような未来。
『施設ボーナスが欲しいから』というのも、もちろん大きな理由なのだが、
しかし、それと同じか、もしくは、それ以上に、
センは、自分の手で創った世界の未来が見たいと本気で思ってしまった。
だから、考えて、考えて、考えて、
その結果、センは、一つの結論を出す。
「……じゃあ……」
「ん?」
「魔法を主軸にするってのはどうだ?」
「……」
「これまでに解放されたアプリの中に、『虚理』を組み込むってヤツがあっただろ。今の段階だと、この世界は魔法が使えないけど……アレを使えば、この世界でも、魔法を使えるようになるんじゃないか?」
「もちろん、使えるようになるけど、死ぬほど面倒なプログラミングが必要で、かつ、あらゆる限界値が、最終的に『工学で再現できる力』・『数学と自然科学が辿り着けるボーダー』よりも若干低いで。究極まで進化した科学と比べれば、ぶっちゃけ、魔法とか、死にスキルやからな。『ボタン一つで誰でも恩恵を受けられるテクノロジー』と『限界を超えた鍛錬を経た個人にしか扱う権利がない魔法』では、比べることがおこがましいレベル」