56話 ゴミみたいな駆け引きの応酬で世界をケムにまく。
56話 ゴミみたいな駆け引きの応酬で世界をケムにまく。
『バグを処理してくれた礼として、300の魂は、蘇生させた状態で、元の世界に戻しておく』
「そいつらを生き返らせるのは、礼になってねぇ。礼なら、施設を解放する的なことで返してくれ」
『別にそれでもかまわないが、もし、そちらを選択するのであれば、この魂は、本当に排除するだけになるが? 私は貴様の奴隷ではない。なんでもかんでも、望み通りにサポートしてやるわけではない』
「……」
センは、一度、渋い顔をしてから、
「……ちっ……ウゼェなぁ……」
と、そうつぶやいてから、プイと顔をそらした。
その態度から、答えを得たナイトメアソウルゲートは、
『では、蘇生させた上で、外の世界に戻しておく』
そう言った直後、
300の魂の体が、淡い光に包まれていく。
ナイトメアソウルゲートから消失する寸前、
サーシャが、
「……ありがとう……」
センを見つめて、心からの礼を口にした。
センは、
「何言ってんだ、てめぇ。状況を理解する機能がゼロか? どんだけ大きな間違いを犯せば気がすむ。俺に対しては、『あんた、ワガママ過ぎん?』と罵倒しておくのが、この場における『お前が言うべきセリフ』の正解だ」
と、ひん曲がったことを口にした。
本当に、どうしようもない男である。
サーシャは、怯むことなく、最後まで、心からの感謝を伝え、
センも負けじと、最後まで、とびっきりの無様を晒し続けた。
――無意味な時間がトテトテと過ぎて、
300の魂が完全に、この場から姿を消した直後、
『あらためて言う。バグの撃破、本当に見事だった。センエース。お前ならば、次の強敵も倒せるだろう』
「あ、やっぱ、次もあるんだ」
『当然だ』
「当然ではないと思うが……まあいいや。で、次は? いつ、どんな敵がくる? バグの野郎、教えてくれるとか言っておいて、結局、はぐらかしやがった」
『不明だ』
「……ん?」
『いつ、どのタイミングで、どのぐらいの敵が襲撃してくるのか、一切不明だ。というわけで、何がきても大丈夫なように準備しておくことだ』
「……一番怖い予告が来たな……」
『ゴールが見えている』という状態だと『頑張り方のシルエット』が見えてくる。
明確なゴールがあるか否かで、モチベーションの精度は大きく変わる。
『一つだけ言えることは、次の絶望が、これまでとは比べ物にならない次元であるということ。アダムやバグと同じように考えていては、到底、超えられない壁だと心得よ』
「一切不明っつってたのは何だったんだよ。この調子だと、本当は、色々知ってんじゃねぇか、と疑わずにはいられねぇ。……あと、一つ言わせてもらうと、アダムもバグも、えげつない地獄だったんだが……」
と、愚痴をこぼすセンの心情をシカトして、
突如、
『頑張れ、センエース。お前がナンバーワンだ』
などと、はしゃいだことを口にするナイトメアソウルゲート。
センが、ダルそうな顔で、
「……ナンバーワンねぇ……ちなみに、それは、なんの順位だ?」
と、尋ねると、
ナイトメアソウルゲートは、シレっと、
『可哀そうな奴ランキング』
などと、ほざきやがった。
センはため息交じりに、
「……違いねぇ」
と、ファントムな返しで、お茶を濁した。