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完全最終話 永久に輝く閃光の物語。


 完全最終話 永久に輝く閃光の物語。


「どいつもこいつもアホづらばっかり。お前ら一生負け続けるな! ゴミゴミゴミ、一つ飛ばして、ゴミ! 飛ばされたお前はカス! 全員、例外なく敗北者! 社会のダニ! ただクソして眠ることしかできない事実上の公害!」


 どうにかヘイトの山を稼ごうとするセン。

 そんなセンの視界の隅に、目を潤ませている子供の姿が映った。


「……ぅ」


 近々の周囲に集まっているのはゼノリカの面々だが、そんな彼・彼女らの、もっと周囲には、大勢の人が集まっていて、センを見つめていた。


 ――その大観衆の中の一人、五歳児ぐらいのガキが視界に入ったセン。

 そのガキも、『自分がセンに救われた』と言うことは理解している。

 己が、なにをしてもらったのかは知っている。


 だが、現状、王の意味不明な恫喝を受けて、

 そのガキは、今、聖典を胸にギュッと握りしめて、涙ぐんでいる。


 どの感情で、そのガキが涙ぐんでいるのか、センにわからない。

 遠目に、涙ぐんでいるように見えているだけだから。

 もしかしたら、目にゴミが入っただけかもしれない。

 ……ただ、視線を少し逸らしてみれば、そのガキ以外にも、たくさんのガキがセンを見て、複雑そうな表情をしていた。


 センをよく知る者なら、先のセリフが、『恥ずかしがりなピエロ』の『照れ隠し』だと気付けもしようが、子供に、その辺の『繊細すぎてもはや変態な機微』を理解しろと言っても無理な話。

 大好きなヒーローの、意味不明なご乱心を目の当たりにして動揺が止まらないガキども。


 そんな、少年少女の悲しそうな顔を見て、センは、


「…………ちっ……」


 知らんガキにどう思われようが知ったこっちゃない。

 誰にどう思われようと、そんなことはどうでもいいこと。

 ただ、センにも、ガキだった頃はあって、そのガキだった頃に、たくさんのヒーローに憧れた。

 ガキにとって、ヒーローは大事な存在だ。

 楽しみにしていたヒーローの映画を見に行って、無様なピエロの大失態ばかり見せられたらどう思うか。

 あのガキがどう思うかではなく、

 自分が、あのガキの立場だったら、

 と、視点を乱舞させて考えてみた。

 山ほどの複雑な感情をこねくり回した果てに、

 センは、一度、ギリっと奥歯を噛み締めて、



「……これからもお前らは、負け続けるだろう」



 精巧なピエロの仮面を脱ぎ捨てて、

 ガキの頃に憧れたヒーローの『拙いおめん』をかぶると、


「苦しい思いをし続けるだろう。生きるってのはそう言うことだ。俺だってそうだ。この先、たぶん、まだまだ、わんさか、『世界を終わらせようとするクソども』が湧いて出て、そいつらの対応で、俺は地獄を味わうだろう。お前らは無様な俺の姿を見て不安に思うだろう」


 まっすぐな言葉を紡いでいく。


「俺は大した人間じゃない。たまたま『繰り返すこと』ができただけ。本当にそれだけだ。他はなんもねぇ。今、首を横に振ってくれている奴が何人もいるが、これは謙遜とかじゃねぇ。ただの事実だ。受け入れろ。……俺は聖人じゃねぇし、王の器でもねぇし、本当はヒーローですらねぇ。ただ、歯ぁ食いしばって、バカみたいに繰り返し続けただけの凡人。どこにでもいる『民衆A』にすぎない」


 そこで、センは、一度視線を切って、息を吸ってから、


「バカみたいに繰り返してきただけ……だが、その回数と質量には、正直、自信がある」


 誇りと覚悟を込めて、


「今の俺なら、また蝉原みたいなヤベェのが沸いても、どうにかできる自信がある。エグい問題が起きても、必ずどうにかしてやる。イカれた奴らは全部、この手でやっつけてやる。もし、今後、俺よりヤバいのが出てきても……関係ねぇ。俺より強い程度の雑魚に、俺は負けないから」

 

 力強い言葉が、

 民衆の魂に注がれていく。

 心と体が温かく震える。


「俺を信じなくていい。ただ、現実を受け入れろ。お前たちの手は、輝く明日に、必ず届く」


 子供たちの目にも光が宿る。

 幼き日に、センがヒーローを見つめていた時の光。


 そんな彼・彼女らに、

 センは、


「今後も苦しいことや辛いことは山ほど経験するだろう。この世は、訳わかんねぇから、また、どんなやべぇ災害が起こるか予想もつかねぇ。もしかしたら、蝉原の100倍とか、1億倍とか、そういうぶっ飛んだ次元のヤベェ大問題が起きて、全部を投げ出したくなるほどの絶望に包まれることもあるかもしれない――もし、そうなったら、その時はもう、頑張らなくていい。お前らは十分頑張った。頑張って、頑張って、頑張って、輝く明日を求め続けてきた。それを俺は知っている。だから、『どうしようもない絶望』を前に『折れるな』とは言わない。ふさぎ込んで、立ち上がれなくなってもいい」


 そこで、センは、

 視線の強度を限界まで底上げして、


「だが、前を向くことだけはやめるな。どんだけ苦しい時でも、歯を食いしばって前を向け。――そこには必ず俺がいる」


 誰もが、センから視線を外すことができない。

 胸の前でギュッっと聖典を握りしめている子供の瞳に、より強い輝きが刻まれていく。

 敬慕と覚悟。

 すべてを包み込む光に触れる。


 第二~第九アルファに属する、ほぼすべての命が、センの一挙手一投足に涙を流す。

 周囲で列を作っているゼノリカの天上と天下の面々は、

 シューリ以外、皆、絶対的平伏のポーズで、センの言葉を聞いていた。

 シューリだって、平伏こそしていないが、誰よりもまっすぐで誇らしげな目でセン見つめている。


 全員の視線が注がれる中、

 この上なく尊き命の王は、


「だから、安心して、輝く明日を求め続けろ。大丈夫。なんの心配もしなくていい。ここには、絶対に、俺がいるから」


 そこで、王は目を閉じた。

 一度だけ、深く息を吸ってから、


 ……カっと、とことん力強く激しく、目を開いて、

 そのまま、太陽を燃やし尽くすような瞳で、


 ――永久の覚悟を宣言する。






「ヒーロー見参」






 そこで、大爆発のような歓声が巻き起こった。

 輝く讃美歌『リラ・リラ・ゼノリカ』の大合唱。

 本来は厳かに口にするものだが、今、この瞬間に、そんなマナーを守れる賢者はいなかった。

 ただ、ひたすらに、全力で、魂のかぎり、『想い』を炸裂させる。

 世界中で、割れんばかりの讃美歌が響き渡る。

 喝采はいらない。賛美は不要。

 そう言い続けた男に降り注ぐ、称賛の嵐。

 当人が望むか望まないかは関係ない。

 魂の叫びは、理性を超越した衝動。

 世界が震える。

 だから爆発する。

 それだけの話。


 止まらないビッグバンのような大歓声。

 その中心にいるセンは、

 天を仰いで、

 涙目で、


(さあ、どうやって、こいつらの記憶を消そうか)


 と、そんなことばかりを考えていましたとさ。

 めでたし、めでたし。


(すべての記憶を……駆逐してやる! この世から……一匹残らず!)


 ――どれだけ追い詰められても、絶対に、ピエロの仮面を完全に捨て去ることはしない絶対の英雄。

 それが、舞い散る閃光センエースのアイデンティティ。


(もし、どうしても記憶を消せないなら、他の方法を探す。何かはあるはずだ。どんな手段でもいい。必ず見つけ出す。俺は折れない。俺は、絶対に、平穏で自由で静かで豊かな孤高の毎日を取り戻す)


 などと、そんなことを考えていると、

 ――気まぐれにふいた風が、民衆の隙間をかけていった。

 龍の巣みたいな厚みのある雲が、柔らかく何重にも重なって、天使の階段を、しなやかに伸ばす。


 まだ全然明るいってのに、いくつか空に星が見えた。

 そこには、澄んだ輝きが、ボヤけながら、けれど確かにあったんだ。


 本当に、長い、長い、長い、長い、長い、長い、闘いだった。


 歓声の中、

 ふいに、センの中で、

 たくさんの思い出がこみあげてきた。


 はじめてスライムを倒した日の事。

 はじめて神の限界を超えた日の事。

 はじめて『兆年』を積んだ日の事。


 今となっては、すべてが激しく輝く思い出だと思えた。


 『幸せそうな顔で、理想のエンディングを噛み締めている皆』を見つめながら、

 センは、心の中で、


(望んでいたトゥルーエンドは、ちょいとばかしうるさすぎて……個人的には、とても完璧とは言えない最終回だったけれど……でも、うん、まあ、『最悪』ではないかな)


 心の中で感慨に耽る。


 トゥルーエンドの余韻を噛み締めながら、

 『心の底から溢れた想い』で締めくくる。



 ――本当の本当に最後だから、ほんのちょっぴり本音を――



 命には、意味があったよ。

 『答え』はわからなかったけれど、多分、そんなものは存在しないんだろうと思う。

 『いつまでも探し続けなければいけない永遠』を、きっと、

 ――『命』と呼ぶんだろうと思う。


 山ほどの絶望を背負って、

 その全てを、何とか乗り越えて、

 そうやってたどり着いた空は、

 ガキの頃に見た空となんの違いもなかった。

 違いなんてあるわけがなかったんだ。


 『全部最初から持っていた』なんて言わない。 

 ここまで自分の足で歩いてきて、

 『その上で出した答え』だからこそ意味があるんだ。


 騒がしい『命のだまり』を見つめながら、

 命の王は、


「この喧騒を、中心じゃなくて、外から眺めていたかったんだけど……まあいいや。お前らが幸せならそれで」



 世界を見渡しながら、

 『誰にも聞こえないくらい小さな声』でそう呟いた。



 最後の最後まで、ひねくれた性格は治らなかったけれど、

 流石に、最後の最後だから、

 少しぐらいは素直になれたみたい。


 それがいいかどうかはわからないけれど、

 少なくとも、最悪ってことはないと思うよ。

 ……多分ね。



 ――ぶっ壊れて、歪んで、腐って、

 それでも、ずっと走り続けた閃光。



 重なり合った命の陰影が、

 コスモゾーンの奥で瞬く。

 わずかでも、でも確実に、

 暗い運命に変革が起きる。


 五月雨さみだれに生まれ変わって、

 古い命と向き合っていく。

 無粋な終焉の壁を超えて、

 進化の最果てとワルツを。


 揺らめく空と命をかさね、

 難攻不落の今と向き合う。

 淡い木漏れ日が刺す庭で、

 シニカルな虹が舞う光葉。


 全ての命が重なりあって、

 祝福の滋雨じうに溶けていく。

 いつまでも終わる事なく、

 光をクギ付けにしていく。


 そうやって繋いだ輪廻を、

 したたかな俳諧はいかいに整えて、

 何の問題もないとうそぶいて、

 美しいだけの愛を重ねて、

 必死になって紡いだ夢と、

 今日と明日がつながって、

 そして――自由になるの。



「愛してるぜ。……なんてな」



 ――こうして、センの永かった時間旅行は終わった。

 ――永い旅の終わりは、唐突で、呆気なくて、

 けれど、間違いなく綺麗だった。


 少しだけ雑多に、けれど、やっぱり美しく、

 ――鮮やかに舞い散った――

 これは、そんな永久に瞬く閃光の物語。


 めでたく、かんけつ。

 これにて、ジエンド。

 めでたし、めでたし。


 ありがとう、センエース。


 ――さようなら、何よりも最強で、誰よりも最高だった、究極の神様――


 この上なく尊い閃光が紡いでくれた物語を、

 きっと、みんな、死ぬまで忘れはしない。

 下手したら死んでも忘れないんじゃないかな。

 ――たぶんね♪




       ~~Fin~~


これにて、レベル1縛りの無限絶望地獄は終了となります!

ただ、センエースの旅路自体は続きますので、もしよろしければ、彼が今後、どうなっていくのか、『センエース~舞い散る閃光の無限神~』で確認してもらえたらなぁ、と思っております!


下にリンクを張っておきます! 

そっちでは、今日、センが最終固有神化に届いてからの物語を20話投稿する予定です!! 


ここまで読んでくださった読者の皆様! 

本当にありがとう!! 

そして、よろしければ、ぜひ、これからもよろしくお願いいたします!!


どうか、どうか!

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