11話 いい感じの距離感で、色々とあやふやに、アバウトなまま、適度になあなあで、なんとなく、そこそこの関係性。
11話 いい感じの距離感で、色々とあやふやに、アバウトなまま、適度になあなあで、なんとなく、そこそこの関係性。
「全員の記憶の中から、俺に関するあれこれを消すってのは可能かい?」
「容易い願いだ」
「よし。じゃあ、もう、それでいこう。空白も気になるが、ちょっと怖いから、それはまたの機会にさせてもらう。そして、『世界を調律する』のは、自力でどうにかする。今の俺がその気になれば、たぶん、まあ、なんとかなるだろう。知らんけど」
と、決定したところで、
全人類を代表して、平熱マンが、
「師よ。我々から師に関する記憶を奪うなど、そのような無慈悲は、どうかご容赦いただきたく」
「俺に関する記憶とか、ない方がいいって。『なんか、色々と、誤解されている現状』を、一旦リセットして、フラットな関係性で、ここから先はやっていこうじゃないか」
ヘラヘラとそう言ってから、
「いやぁ、正直、助かったわ。どうやって、俺に関する誤解を終わらせようか、真剣に悩んでいたから」
「師よ。我々は、なに一つとして、誤解などしておりません。今後も、ずっと、永遠に、『果て無く尊き師』に『絶対の忠誠』を誓う配下の一端であり続けたく存じます」
「うんうん、そうかそうか。よかったよかった。まあまあ、そういう意見もあるだろうけれども、そうじゃない意見も大事にしていきたい心境だから、今後は、まあ、いい感じの距離感で、色々とあやふやに、アバウトなまま、適度になあなあで、なんとなく、そこそこの関係性でやっていこうじゃないか。うんうん」
まったく聞く耳を持っていないセンは、
ニコニコ顔で、『祈りの集積所さん』に意識を向けて、
「改めて、具体的にお願いさせてもらう。第二~第九アルファに所属する全員の頭から、俺に関する記憶を、まるっと消してくれ。『変に崇拝されたりする』のは、ほとほと面倒くさくて仕方がないからな。てか、純粋に俺に関する記憶なんかないほうがいい。進化の邪魔だ。なくていい。喝采はいらない。賛美も不要。そんなもんを投げかけられても暑苦しいだけ。俺は、いつだって、ただの『なんか知らん間に外敵を殺してくれる便利装置』――それでいい」
センエースの想いはゆるぎない。
ここまでこじれてしまった原因の大半はセンエース自身にあるが、
しかし、原因の一端は、ゼノリカの面々にもある。
「今までも、ずっと、同じことを考えていたが……かつてのゼノリカの面々が暴走して、『俺に関するアレコレを節操なしに布教する』という『えげつない地獄』を経験したことで、より強く強く強く、『俺に関する記憶は邪魔なだけ』と、そう思うようになった」
そこで、センは、視線の強度を強めて、
「というわけで、集積所さんよぉ。俺の、この、たった一つの願いを、どうか叶えてくれ。絶対的精神的支柱の効果が薄くなるのはアレだが、信仰に頼るようじゃあ、話にならないって面もあるから、別にいい。『てめぇ一人の力ですべての外敵を抹殺する力を』――それが俺という外敵処理機構のコンセプトぉ!」
「師よ!」
「安心しろ。平。お前らが俺を忘れても、俺は、決して忘れない。いつも近くで見守っているから。俺はいつだって、お前たちの心の海を漂っている。何も心配はいらない」