10話 レゾナンス世界線の深淵。
10話 レゾナンス世界線の深淵。
「……ミッション、コンプリート……ようやく任務完了。……ほんと、ずいぶん、時間がかかっちまったな……」
おそろしく時間がかかったが、どうにか、こうにか、なんとか、かんとか、『全て』を完璧に取り戻したセン。――それがスイッチとなった。
―― ファイナル裏イベントスイッチ ON ――
――『レゾナンス世界線の深淵』に辿り着く。
――条件達成。
深淵を覗き込んだ時、
深淵もまたこちらをのぞいている。
ファイナル裏スイッチがONになったことで、
空間に歪みが生まれた。
そのひずみの向こうから、
ピンポン球サイズの、まっ黒い玉が転がってきた。
センが警戒していると、
その黒い玉から合成音声が流れ始める。
「あまたの困難を乗り越え、真理の最終・命の終着点に届いたものよ。さあ、願いを言え。どんな願いでもひとつだけ叶えてやろう」
「はぁ? 急になに、その超展開。誰もドラゴン◯ボール集めてねぇんだけど」
「ゴールに辿り着いたものは報酬を得る。なんだってそう。……それに伏線はちょいちょいあったはずだ」
「そうなん? よくわからんが、とりあえず、お前は誰?」
「コスモゾーンの深淵に刻まれた祈りの集積所」
「さっぱりわからん。園児でもわかるように言いなおせ」
「願いがないなら私は消えるが?」
「ちょっと待て。そう急ぐなよ。まだ慌てるような時間じゃない」
「では願いを言え。尊き深淵にたどり着いたものよ」
「深淵に尊いもクソもないと思うが、まあいいや。えーっと、そうだな よし、じゃあ、この世界を、完璧にしてくれ」
「抽象的な願いは叶えられない」
「ああ? うぜぇなぁ。えっと、じゃあ、全員が幸せになれる世界だ」
「抽象的な願いは叶えられない」
「幸せって、そんな抽象的じゃねぇだろう。じゃあ、えっと……全員が健康的で、本当の意味で平等で、正しい努力が真っ当に報われる……そういう世界にしてくれ」
「抽象的な願いは叶えられない」
「テメェは、出来の悪いRPGのクソAIか? 無限ループかましてきやがって。じゃあ、なんならかなえてくれんだ? むしろ、それを、具体的に言ってくれや」
「300円欲しい、と言われれば、もちろん、300円をくれてやる。そういう、具体的な願いを言え」
「……あ、そう。……じゃあ、えっと、えっと」
そこから先、センは頭をフル回転させて、どうにか、理想を現実化させようとしたが、しかし、
「もうわからん! もう、お前の方から案を出してこい! ここまでの、俺の願いを考慮した上で、『こんな願いなら叶えられますけど?』みたいな感じで、ドラ◯エ3のしんりゅうみたいに、選択肢を提示しやがれ」
「では、次の中から選べ」
・存在値が10%上昇する。
・世界一の大金持ちになる。
・世界一の美女と結婚する。
・世界一の童貞を卒業する。
・全世界を統べる王になる。
・エッチなほんが読みたい。
・めずしいメダルがほしい。
・全人類の記憶を操作する。
・
「だいぶ魅力的な願いで溢れているが この『最後の空白』の『一個上』にある『記憶に関する願い』は、特に心を惹かれるねぇ。例えば、全員の記憶の中から、俺に関するあれこれを消すってのは可能かい?」
「容易い願いだ」
「よし。じゃあ、もう、それでいこう。空白も気になるが、ちょっと怖いから、それはまたの機会にさせてもらう。そして、『世界を調律する』のは、自力でどうにかする。今の俺がその気になれば、たぶん、まあ、なんとかなるだろう。知らんけど」