53話 理性と合理性を殺して暴走する王。
53話 理性と合理性を殺して暴走する王。
悪夢バグの問いに、
センは、わずかも考えることなく、即答で、
「俺は神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華。舞い散る閃光センエース」
『王』を名乗った。
『それだけはやめておこう』と心に誓った次元に足をつっこむ。
やめておいた方がいいのに――と、センの中にいる『厄介事を嫌うセン』が嘆いている。
けれど、センは、止まらない。
いつだって、そう。
『理性的なセンエース』を『暴走するセンエース』が拒絶する。
『アホみたいに暴走する王』で暴君。
結局のところは、それだけの、果て無くみっともない話。
(……『S・A』、俺はお前を誤解していた……)
頭の中で、ぶつぶつと、
(お前も、たぶん、今の俺と同じだったんだろう)
根拠はないが、心から思う。
(お前も、結局のところ、俺とまったく同じで、『ゴミみたいな見栄』と、『笑えないジョーク』を『糧』にしていただけなんだ。歪みの強い『貪欲なワガママ』で、世界をサンドボックスにして、小粋に、瀟洒に、風雅に、命で命をもてあそぶ。――そうだよな。そうじゃないとおかしいよな。知らんヤツのために命を張るなんて、そんなことはできるわけがねぇし、するべきでもねぇ)
『自分なりの答え』と向き合うセン。
しょせんは、ファントムトークなのだけれど、
しかし、そこには、確かな質量が刻まれていた。
(俺もお前も同じだ。異常すぎる夢を振りかざして、狂ったエゴを叫んでいる)
そこには、道徳も倫理も介在しない。
ただのワガママ。
(トチ狂った夢を追い求めた最果て……そこには、きっと何もない。そんなことは分かっている。けれど、わかっているからなんだってんだ。『悟った気になって斜に構えるダサさ』を抱えるぐらいなら、とことんみっともなく、徹底して無意味に、『てめぇだけの自己中』だけを追い求めてやる)
『利己に即した自分という暴力』を追い求めてさまよい続ける永遠の敗北者。
(単純な話なんだ。気難しい屁理屈は御呼びじゃねぇ。俺は……俺は、ただ……)
そんなワガママに没頭する人生こそが華。
「俺は、俺のやりたいことをやるだけだ」
頭で想い、口に出す。
『憔悴した当り前』で自己を深閑にひたす。
『意表をつく失態』で自愛と人事を尽くす。
『奮闘する自意識』で自我の焦燥感を殺す。
公園の砂場で見つけた天の川から、
自由気ままなホウキ星にまたがり、
音程のはずれたビートボックスで、
洒脱な狂騒曲を奏でてみたりして。
そうやって、積み重ねた言葉遊びの思考ゲームで、
『老練なピエロ』の『滑稽さ』を考察してやるの。
――『ちょっと、何言っているかわかんない』、
と、『手前のファントムトーク』に辟易しつつ、
連鎖する命のコンボ数を、片手間に数えながら。
(……『S・A』、お前は俺と同じだ)
所詮は、幼稚な連想ゲーム。
だけれど、おそらく、
(だから、たぶん……)
――俺も、きっと、お前と同じ場所にいける。
吹っ切れたセンは加速する。
もはや、迷いは完全に断ち切った。
守るべきものは、ワガママなエゴ。
それでいい。
それだけでいい。
『だからこそたどり着ける場所』を目指して、一心不乱につきすすむ。
――舞い散る閃光はもう止まらない。
『止まり方』は忘れた。
思い出せる気もしない。
目が完全に飛んでいた。
理性を置き去りにして、
――利己を追求するだけの獣になる。
凶悪な化け物の誕生日。
ただ前に、もっと前に。
膨張するエゴの流星で、
世界の闇を埋め尽くす。