110話 復讐。
110話 復讐。
「バカだね、セン君。田中トウシのことなんか放っておけばいいのに。田中トウシを復活させたせいで、君の生命力は最大時の1000分の1にまで落ちている。ソレなら、流石に俺でも君を殺しきれるよ」
「そうだな。流石にここまで生命力が削られた状態だと、お前に勝つのは厳しいな」
そこで、センは、苦しんでいる民衆を見て、
「まあ、それはそうとして、お前、マジか? こんなに、豪快に、約束を破るとかある? 嘘だろ? え、いやいや、蝉原さんよぉ……ちゃんと、約束したよね? お前と俺、互いの誇りを楔にして、きっちりと契約を交わしたよね? なのに、なんで、約束を破った? これ、ダメだよね? これ、お前 この約束を破るってことは、お前の誇りが、マジでチリボコリになっちゃうってことなんだけど? いいの? よくないよね? 俺たちの約束って、死んでも破れない系のアレだよね? なのに、マジでなんで――」
「ごちゃごちゃうるさいよ、セン君。さっきも言ったけど、俺には、君との約束なんかよりも、はるかに大事なものがあるんだ」
「なんだよ、それ」
「復讐だよ、セン君。俺は君を許さない」
「どっちかって言ったら、それ、俺のセリフだと思うんだがね」
「そんな悠長なことを言っている場合かな? いま、殺し合ったら、普通に俺が勝つよ? やばいんじゃない?」
そこでセンは、民衆には聞こえないよう、蝉原にテレパシーで、
(で、どうすりゃいいんだ? どうすりゃあ、お前は王をやってくれるんだ?)
(この期に及んで、まだそんなことを行っているのかい? やらないよ、王様なんて。俺の趣味じゃない。王様は、体制側のトップで、俺は反体制側のトップだよ。水と油だ)
(頼むよ、蝉原くん。いや蝉原さん。俺の一生のおねがいだ。完璧な王になってくれ)
(そもそも俺の方から提案しておいて、なんなんだけど……なんで、そんなに頑なに、俺を王にしようとしているのか、理解に苦しむよ)
(まず、俺がやりたくないってのが一つ。あと、もう一つは、蝉原勇吾が、俺の思っていた以上に天才でバケモノで、そして何より鉄人だったから)
(……)
(3兆をガチで積んだんだろ? 無能な俺の200兆より、『超天才の3兆』の方が、遥かに価値がある。……おめぇはすげぇよ、たった一人でよく頑張った。お前なら、完璧な王になれる。少なくとも俺よりも出来がいい王になれるのは間違いない。とりま、『悪すら飲み込むことができる』って点が、とにかくハンパねぇ。お前にしかできないことがある……てか、お前ならできる。だから頼む。復讐したいってんなら、俺をとことんなぶり殺しにしてくれてもいいから、王をやってくれ。理想の世界を作ってくれ)
(……ふふ)
鼻で笑ってから、
蝉原は、右手の拳を、センの目の前で、ぐりぐりぃっと強く握りしめる。
すると、
耳をつんざくような、世界中の人間の悲鳴の声が響き渡る。
「おい、蝉原。やめろ」
「止めたいなら、俺を殺しなよ、セン君。純粋な話さ」
そう言って、さらに強く拳を握りしめる。
さらに大きくなる悲鳴。
センは一瞬で沸騰し、
距離を殺すと同時、
蝉原の顔面に拳を叩き込み、蝉原の右手首を掴むと、強く握りしめて、蝉原が右手の拳を握りしめることができないようにする。