109話 命を返すぜ、灼熱にかえて。
109話 命を返すぜ、灼熱にかえて。
「今のワシでは、話にならん。というわけで、ワシはここで命を消費しようと思う」
「ほう」
「ワシの命をくわせて、無理矢理にでも、蘇らせる。あのアホには、まだまだ、仕事をしてもらわんとあかんからのう。ワシのかわりはナンボでもおるけど、あいつのかわりは一人もおらん」
そう言いながら、自分の生命力を圧縮して、譲渡できるように整えていく。
ソレは、かつて、『ウムルに食い散らかされた配下』に対して、センエースが使った一手。
トウシは、自身の命を使って、
センエースの復活を望んだ。
そんなトウシに対して、
「センエースの死を甘く見ちゃいけないよ。彼は『究極の魔』である俺に殺されたんだ。君程度の命で完全復活は――」
「そんな『嬉しげな顔』して教えてくれんでも、ワシの命一つでは完全復活でけへんことぐらい知っとる。復活に成功したとしても、かなり弱体化しとる……わかっとるよ、全部」
「……」
「けどなぁ……どんな状態やろうと、復活してくれたら、それでええねん。存在さえしてくれれば、あとは、多分、どうとでもなる」
「くく……とても間抜けな戯言のはずなのに、その愚かな妄言を、絶対に否定したくない俺がいる」
「……セン……もう選択を間違えるなよ。もう二度と、蝉原と契約なんかすんな。こいつは、お前との約束なんか守らんらしいで」
そういってから、
トウシは、その場でバタっと倒れ込んだ。
トウシの中から漏れ出た『命の輝き』が、
蝉原の腕に抱かれている『センエースの死体』に流れ込んでいく。
ほんの数秒の奇跡。
完全に死んだはずのセンが、
「がはっ!」
息を吹き返す。
蝉原の腕の中で復活したセンは、
「………………えぐいな、この状況」
と、いろいろな想いを込めてそういってから、
蝉原の腕の中から、脱兎の如く脱出して、
「あーきしょい、きしょい。今ほど汚物を消毒したいと強く思ったことはない」
と、不快感全開の顔でそう言い捨てつつ、
蝉原の手に抱きしめられていた箇所を、
力一杯に、何度となく払う。
あらかた、パワープレイの除菌を終えると、
センは、
「とりま、トウシきゅんよぉ テメェに借りを作るのだけは死んでも嫌なんで、命を返すぜ、灼熱にかえて」
と、言いながら、
特に灼熱に変換するわけでもなく、普通に、命を田中に分けて、復活させるセン。
やり方は、さっきトウシがやった方法とほぼ一緒。
あっさり生き返ったトウシだったが、
センを生き返らせるのにエネルギーを使い過ぎていたようで、復活したが、ぐでっと気絶したまま。
ちなみに、トウシは、『自身の生命力の核の大半』を使ってセンを蘇生させたわけだが、トウシの生命力がショボすぎるため、『センエースを完全な状態で蘇生させること』はできなかった。
よってセンは、おおよそ『生命力10分の1』ぐらいで復活している。
さらに、センは『残っている十分の一の生命力』の『99%』以上を注いで田中を復活させた。
つまり……
「バカだね、セン君。田中トウシのことなんか放っておけばいいのに。田中トウシを復活させたせいで、君の生命力は最大時の1000分の1にまで落ちている。ソレなら、流石に俺でも君を殺しきれるよ」
「そうだな。流石にここまで生命力が削られた状態だと、お前に勝つのは厳しいな」