表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1201/1228

102話 センエースは、とことんメンヘラで、最高にクールな、自己愛と承認欲求のスカベンジャー。


 102話 センエースは、とことんメンヘラで、最高にクールな、自己愛と承認欲求のスカベンジャー。


 蝉原はパチンと指を鳴らした。

 すると、全員の頭の中に、ぶつ切りの映像が流れる。

 それは、センエースの言動を記録したもの。

 これまでに、センが『実際』に口にした最低ゼリフをまとめた『黒の章』である。


 長尺で垂れ流されるそれを、ガッツリと監修したセンは、ボソっと、


「メチャクチャいい出来の最低まとめ集だな。蝉原、お前はディレクターとしても天才だ。これだけ、『俺という人間』が『詳細かつ端的に表現された資料』は他にない。謎の美化修正がくわわった聖典なんかとは比べものにならない、俺の芯をリアルに納めた傑作集。これこそが本物の聖典。永久保存必至のパーフェクトディレクターズカット版」


 などと、絶賛するセンの視線の先で、

 蝉原が、民衆に向かって、


「……ここで、センエースに『この映像に対して、何か異論反論弁論があるか』を尋ねてみることにしよう。さあ、セン君。何か、言い訳があるなら、民衆に聞かせてあげてくれ。今、見てもらった最低な発言は、何かの間違いかい? 命の王が、あんな最低なことを、無意味に口にするわけがないから、何らかの、よんどころのない事情があるのだと思うのだけれど? そのへん、どうだい? 詳しく説明してくれ」


「よんどころのない事情なんか皆無。反論なんかあるはずもなし。あれは、完全に、俺の素だ。あの切り抜き動画に、改竄、捏造、フェイク、印象操作なんかは、いっさいない。センエースは、あの映像にある通りの、とことんメンヘラで、最高にクールな、自己愛と承認欲求のスカベンジャーだ」


「……そう。その通り。事実、俺は、あの切り抜き映像を一ミリたりとも加工していない。実際にセンエースの言動をコスモゾーンの記録保管庫アカシックレコードから、『完全ランダム』に拾ってきただけ」


 今の蝉原のセリフにも嘘はない。

 選りすぐりの『センエース最低発言まとめ』の『中』から『完全ランダム』で選んだ。

 決して『全ての発言の中からランダムで選んだ』とは言っていない。


 印象操作は、小技が大事。

 こういった細かいテクの積み重ねで、

 蝉原は、民衆のヘイトを上手にコントロールする。


「民衆諸君、センエースという神がどういう存在であるか、よくわかっただろう。と言うわけで、みんな、俺を応援してくれ。センエースの敗北を願ってくれ。その応援が実り、センエースを殺せた暁には、『抽選で10万人』などと、セコいことは言わず、全員の願いを叶えよう。金品、家族、健康、才能、肉欲、全て、叶えてあげるよ!」


「パーフェクトだ、蝉原。文句のつけようがない完璧な作戦。俺の負けだ」


 己の敗北を認めるセンエース。

 そんなセンを尻目に、蝉原は、民衆に向けて、続けて、


「さあ、全員で俺に祈りを捧げ、そして、同時に、センエースに憎悪を向けようじゃないか。俺を崇拝するほどに、センエースに悪意を向けるほどに、君たちは救われる。逆に、センエースが俺を攻撃するほどに、俺の『センエースの瘴気を抑えこむ能力』が低下して、君たちは苦しむことになる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ