52話 意味なんて、あってたまるか。
52話 意味なんて、あってたまるか。
「さあ、絶望する時間だぜ……虫野郎。お前に俺が殺せるか? 無限に蘇生するお前ら1万よりも……俺一人の方が……よっぽどしぶとくて鬱陶しいっていう、ヤバすぎる現実を、その骨身に……叩き込んでやるよ」
「……恐怖を感じる胆力だ。けれど、もう、限界は見えているだろう?」
そう言いながら、悪夢バグは、
また、300の魂に向かって、カンファレンスコールを放つ。
当たり前のように、センは、また自分を盾にした。
「げはぁあああああああっっ!」
運悪くクリティカルヒット。
センは、意識がふっとびそうになった。
「…ぐぅううっ!」
イカれた気力だけで自分を支えるセン。
両足を踏ん張って、歯を食いしばって、
血と傷で塗れた体にムチを打ち続ける。
「……はぁ……はぁ……」
『死にかけの次元』が狂った異質な領域で、
センは、まだ前を見続ける。
そんなセンの視線に恐怖を感じた悪夢バグは、
「どうか、私に、答えを教えてくれ、センエース。なぜ、貴様は、そこまで意固地に『カスの盾』を続ける? その行為に、いったい、なんの意味がある?」
「意味なんか……あってたまるか……」
かすれた声で、そう答える。
「意味なんかねぇ……理屈なんかあるわけねぇ……………俺の奇行に、合理性や、生産性なんか……あっていいわけがねぇんだ……」
ぶつぶつと、自分の中にある想いを吐露していく。
頭の中を、無限の言葉が、グルグルとまわる。
答えになっていない『目茶苦茶な感情論』だけが、シナプスの末路を蹂躙していく。
その結果、
「……ああ、全部わかった……」
センは、真理の一つに辿り着いた。
『命の答え』――そんなものはないという理解の向こう側。
合理性や生産性の最果てにある、流麗なる生命の爛漫。
そんな『何か』の一端に、センは、ようやく届いた。
「……単純なことだったんだ」
センの目に、『さらなる光』が灯る。
色が変わった気がした。
気のせいかもしれない。
たぶん、気のせいだ。
けれど……きっと、ただの気のせいではない。
「……俺は、いずれ、最強のヒーローになる男だ。その俺が……お前らごときを相手に、『300人の魂を守る』という程度の縛りも守れないなんて……そんな情けない話はない……それだけの話だったんだ……」
中身のない言葉で、世界をだます。
空虚な言葉で、自分自身を追い詰める。
「……疑問が晴れて、スッキリしたことだし……永遠の足止めを続けようか。こんごも、後ろの魂を狙うのであれば好きにしろ。その程度の安い縛りは……鼻歌交じりの余裕で遵守してやるよ……その先に、今の俺を置き去りにした俺が待っている……そんな気がしないでもないから」
キ〇ガイピエロをまっとうする。
どこまでも、いつまでも、永遠に。
「……ヒーロー……見参……」
ファントムトークが止まらない。
からっぽの連鎖が空回りしてエンストをこいている。
『価値のないムダ』と『邪魔なゴミ』だけがセンの器をうめつくす。
けれど、顔付きだけは、妙に晴れやかになった。
「気持ちが悪いな……お前は、いったい、なんなんだ?」
そんな、悪夢バグの言葉に、
センは、わずかも考えることなく、即答で、
「俺は神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華。舞い散る閃光センエース」
王を名乗った。