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100話 民衆がセンエースを憎むほどに、瘴気の濃度が薄くなる。


 100話 民衆がセンエースを憎むほどに、瘴気の濃度が薄くなる。


 蝉原は、民衆に聞こえないよう、センだけにつないだテレパシーで、


(セン君、俺は、ここまでに、たくさんのデタラメを吐いてきた訳だけれど、『民衆が君を憎むほどに、瘴気の濃度が薄くなる』というのだけは本当だよ)


(それが事実だと言う証拠は?)


(ないけど、俺は君に、この手の嘘はつかないよ。ちなみに、これは、暴露のアリア・ギアスでもある。君に本当の事実をばらしたことで、ホロウワールドの濃度がさらに増した。民衆たちは、だいぶ苦しくなってきているよ。あ、そうだ。民衆の苦悩を理解できるように、感情の一部をリンクできるようにしてあげるよ)


 そう言われた直後、

 センは、今、民衆が受けている『苦悩の濃度』が理解できるようになる。

 絶望マエストロのセンは、


(おっと……これは……ヤバいな……)


 この程度、センにとっては、昼下がりのコーヒーブレイクとなんら変わらない平穏な苦悩だが、

 一般人視点では、すでに相当に厄介な次元。

 現時点で、『インフルの大暴走』級のしんどさに昇華されている。

 その『だいぶエゲつないしんどさ』を受けて、民衆の大半が、その場でうずくまるようになっている。


(ゴールまでの必勝法は見えている……が、対応を誤ると、マジでシャレにならん……)


 センの焦りが募っていく。

 ギリっと奥歯をかみしめるセンを横目に、

 蝉原は、民衆に、


「すでにだいぶ苦しくなっているだろう? 耐えられない者は、センエースを憎悪しなさい。そうすれば、少しは楽になる」


 あまりに苦しくなって、耐えきれなくなった者たちの中から、

 センエースを憎悪する者が現れはじめる。

 『よくも、こんな目に遭わせやがって』と、センエースに対して呪詛を吐く。

 すると、バグった解熱剤でも飲んだみたいに、スーっと、体が楽になる。

 その甘美な治癒が、民衆の心を、より強く惑わせる。

 よほどの強い心をもっている者でなければ、

 この悪魔のささやきを無視することは出来ない。


「……まだ、センエースを憎悪すべきか迷っている者がいるようだから、『センエースを憎み、俺を応援するメリット』を増やそう。君たちの応援が実り、見事、俺がセンエースを殺せたあかつきには、君たちの願いを叶えようじゃないか。君たちそれぞれの欲望を、夢を、全て、俺が叶えてあげるよ。これは取引だ」


「……惚れ惚れするほど、見事な『悪魔の囁き』だ。本当に、悪意に関しては右に出る者がいねぇな」


 と、そう呟くセンを尻目に、

 蝉原は続けて、


「言葉だけでは信じられないだろうから、今、抽選で10万人の願いを叶えてあげるよ。わかりやすくするために、このサービスは、『強さ』にかかわる願い限定にしようかな」


 そこで蝉原は、『すでにセンエースに憎悪を向けている者』で、かつ『より高い存在値を望んで鍛錬を続けてきた者たち』の中から10万人ほどを無作為に選別すると、パチンと指を鳴らした。

 その瞬間、選ばれた者たちの存在値が、3倍以上に膨れ上がった。

 どれだけ努力してもなかなか上がらなかった存在値が、一気に膨れ上がったのを感じた10万人の中の大半が、歓喜と驚愕ののち、蝉原に対し、深い感謝の念を抱いた。


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