85話 強すぎるセンエース。
85話 強すぎるセンエース。
「蝉原! すごいな! 今のお前は、確実に今の俺を超えているよ! 俺の半分の期間で俺をガッツリ超えていくとは、なんてウザい野郎なんだ、このやろう!」
「最大級の褒め言葉、謹んで頂戴させてもらう。誇らしいよ。他の何よりも」
そう言いながら、蝉原は、センに対して、『自身の深み』を『よりクッキリと見せつけよう』と、軽やかに舞う。
この瞬間、蝉原は、それまでの自分の限界を、わずかに超えた。
センエースに、『もっと、自身の輝きを見せつけたい』という欲求が、蝉原の底を押し上げる。
一段階上がった蝉原を見て、
センは、
(段々とギアを上げてきたな いいだろう。俺も、見せてやるよ。どっちが強いか、ガッツリと決めようじゃねぇか)
心の中でそうつぶやいてから、
今の蝉原と同等クラスの武を、
――どっしりと、蝉原に見せつけていく。
センの武を目の当たりにした蝉原は、
(っ? つ、強すぎないか……? まだ底があったとは……想像を大幅に超えている……ま、まさか、ここまで強くなっているとは……まずい……)
焦りが出てくる。
心が逸ってくる。
センエースの強さは、『蝉原が事前に想定していたライン』の『許容範囲最大値』を、5段階ほど上回っていた。
予想限界値を『3段階ほど上回る』と言う程度であれば、『まあ、センエースならば、そのぐらいのことをやってみせてもおかしくはない』と、余裕で構えることもできた。
しかし、5段階になってくると話が変わってくる。
今の蝉原の心境を数学のテストで例えよう。
数Aの期末で出題範囲をバッチリ対策して挑んだら、キチ◯イ先生は、あろうことか、まだ習っていない数Bから50点分の問題を出してきやがった。
――みたいな感じである。
赤点ラインが60点と言う厳しいハードルで、そんなラリったマネをされれば、当然、こっちとしては焦り散らかす他ない。
どうしたものかと悩んでいると、
センはさらに、
「さあ、蝉原! 上げていくぞ! リズムにのるぜ♪」
などと叫んで、
さらに一段階上の武を見せつけていく。
加速するテンポ。
視聴者を釘付けにするリズム。
センエースは、まだ舞える。
(ちょっ……えっ、まじで……っ?!)
当たり前のように、置いていかれる蝉原。
先ほどの例えを続けるなら、
『数Cの問題が30点分追加された』
と言った感じ。
全体で6割取らないと赤点なので普通に難易度爆増。
当然、履修していない範囲なので、手も足も出ない。
いや、厳密に言えば、一応、履修した範囲の応用の部分もなくはないので、全く何もできないと言うわけではない。
ない……のだが、しかし、
「うぺっ、いげっ、らげっ」
結局のところ、蝉原は、何もできずにボコボコにされる。
そんな蝉原に、センは、
「やられる演技が上手いじゃねぇか! なるほど、俺を油断させようって腹づもりだな? どこまでも徹底して狡猾なヤツだな! 流石だぜ! しかし、俺はお前をナメないぞ! お前は『俺の半分』を積んだ天才。つまりは、俺を殺せる器! その認識がある限り、俺は絶対に気を抜かない!」




