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83話 ああ、行けたら行くわ。


 83話 ああ、行けたら行くわ。


「蝉原。やっぱり、華があるな、お前には。……その瀟洒な輝き……俺にはないものだ」


「華やセンスは生まれつきだからね。もちろん、君の中には存在しないさ」


「出来のいい煽りだ。気に入った。殺す」


 蝉原のえぐるような煽りに対し、ちゃんと頭が茹で上がったセンは、

 自身のスピードに、ちょいとしたテコ入れをかましていく。

 緩急を利用して、蝉原の虚を、うまい具合に突こうとした……が、

 蝉原は、その全てに対して、完全な対応を見せた。


 一連の動き全部を、くまなく観察しきったセンは、


「別にもう疑ってねぇが……お前、本当に、積んだんだな……お前の武からは、確かに、『悠久の研鑽』を感じる」


「しんどかったよ。辛かったよ。苦しかったよ。時間の地獄は……想像を超えていた」


 そこで、蝉原は天を仰いで、


「……時間の地獄を積む前の話……昔々……『センエースが200おく年を積んだ』と初めて聞いた時……俺は、その年月を、うまく想像できなかった……そりゃそうだろう? まともな人間の頭で、200億年をイメージすることは難しい」


「まあ、だろうな」


「……自分が時間地獄を積む前まで、俺は、君のことを、まったくもって、一ミリも理解できていなかった……君のことを、どこかで、漫画のキャラクターのようにとらえていた。『現実味を感じることさえ出来ない領域』でさまよっていた。……けど、今の俺は、君のシルエットが正しくわかる。君はすごい男だ。知っているつもりだったけれど……本当はなにもしらなかった。かつての俺には、君の敵を語る資格はなかった。けど、今の俺は違う。今の俺には、十分な資格がある」


「……そうだな。今のお前には、俺の敵を語る資格がある。まあ、その資格のランクは漢検三級ぐらいだと思うから、そんな、ゴリゴリのドヤ顔で自慢されても、挨拶に困るけど」


 センのファントムトークを、

 蝉原は、軽やかにシカトして、


「君の半分を積んだ……積むことが出来た……これは、俺にとって、一生の自慢だ。今後、俺が、これ以上の偉業を成すことはない」


「まあ、実際のところ、なかなか、それ以上のしんどさってないと思うぞ。俺ら、ほんと、よく頑張ったよな。俺ら、ほんと、すげぇな」


「ふふ。今度、飲みにでもいって、お互いの苦労話を、一晩中、語り合ってみたりするかい?」


「ああ、行けたら行くわ。ちょっと、あれこれ、猫に餌あげたりとか、彼女とデートしたりとか、友達の結婚式にいったりとか、親戚の家に遊びにいったりとか、親父と釣りにいったりとか、ほんと色々と用事がてんこ盛りだから、時間とるのが、なかなか難しいかもしれないけど、うん、行けたら行くわ」


「くくく」


 と、心底楽しそうに笑ってから、

 蝉原は、スっと武を構える。


「準備運動は、もう十分だよね」


 そう言ってから、

 グンっと、自分の奥にある熱を爆発させていく。

 エンジンに点火。

 豪快な爆音で、心臓を加速させる。


 『蝉原が膨れ上がった』とセンが認知できたと同時、

 蝉原は、センの背後を奪い取っていた。

 蝉原は、ギラギラした目で、

 腰の回転に心を込めて、

 センの首裏に、延髄蹴りをぶちこんでいく。


 対応が明確に遅れたセンは、蝉原の一撃をもろにくらう。

 激しい衝撃で脳がグラングラン。


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