78話 究極の終焉という美。
78話 究極の終焉という美。
「君は死ぬ。ゼノリカの面々は、君の死を知って、絶望することになる。そして、その深い絶望は、俺の器になるんだ。君の命と、ゼノリカの絶望を器にした俺は……真の意味で完成する。つまりは、世界が完成するということ。そんな、理想のエンディングが俺の望みだ、セン君」
様子見の殴り合いを続けながら、対話を続ける二人の修羅。
「全滅エンディングがお前の望みか?」
そんなセンの問いかけに、蝉原は、ニっと微笑み、
「正確に言うと、全滅エンディングは、破壊衝動ソルの望みだね。俺自身は、『全滅エンドは意味がない』と思っていた。どうせなら、世界を征服したり、すべての命を、ちゃんと絶望に叩き込みたいと願っていた。けど、『真なる永き』を積んだことで、少しだけ考え方が変わったよ。正直、破壊衝動ソルに洗脳されたところもある。けど、別に、それはいいんだ。今の俺の望みは……美しいエンディングを迎えること。君が死んで、俺と一つになって、すべての絶望が昇華されて、完全なる終焉を迎えること。美しいと思わないか、セン君。完璧で完全で究極のエンディング。迎えてみたいと思わないかい?」
「思わないねぇ。俺は、好きな作品には、永遠に続いてほしいと思うタチだから。綺麗に終わらせるとか……そんなもん、作者の怠慢としか思わない。『カンストしたゲームはブック○フに売っぱらう』のが俺の本質だが、『無限の広がりがある物語なら、ずっと見つめていたい』ってのも俺の本音だ」
「究極の終焉という美。完璧で芸術的な最終回。ソレを愛し求める気持ち、全くわからないと言うわけではないだろう? 俺は、破壊衝動ソルと一緒にいた『永き』の中で、その『果てなき美』に魅入られた。君を殺すことで、世界は本物の価値を得る。だから、セン君。君は俺に殺されるべきなんだ」
「ははは」
センは、一度、鼻で笑ってから、
「蝉原さんよぉ……なに、さっきから、絶望的に薄っぺらいこと言ってんだ。二束三文のレプリカを二束五文で転売しているカス以下の安い半グレ詐欺師転売ヤーみたいだぜ。宇宙一のヤクザが聞いて呆れる。なんでそこまで落ちぶれた? お前は、もうちょっと洒脱で軽妙で自由なクソ野郎だったろうが」
「人は成長するモノだよ、セン君」
「落ちぶれたつってんだろ。耳死んでんのか」
「……『望まない未来』を否定したい気持ちはよくわかるけれど、ここは、一つ、感情を排除した評価をしてもらいたいところだね」
クソ以下の平行線な舌戦の中で、
センと蝉原は、互いの武を小出しにしていく。
変身は使わずに、それぞれの『素の厚み』だけをぶつけあう。
ナメプではない。
丁寧に、『互いの基礎存在値』の『様子』と『ご機嫌』を伺っているだけ。
どんなに、変身能力の資質が上がっても、結局は倍率。
基礎が0なら、100兆倍をかけてもゼロ。
最終的には、土台の質がモノをいう。
それが、神の領域、その神髄。
多角的なジャブで精密に距離感をはかり続けている、この状況。
蝉原のジャブを、その身で何発か経験したセンは、心の中で、
(間違いなく厚みが増している。ただごとじゃない成長。……『100兆年修行したと言うのはハッタリで、実は100万年しか積んでません』……というオチを期待したんだが この『ぶっ飛んだ厚み』は、100万や1000万程度で手に入るものじゃねぇ。俺は詳しいんだ)
200兆年を積んできた『キチ◯イソムリエ』のセンさんは、もはや、軽く武を交わすだけで、相手がどの程度のキ◯ガイか見分けることが可能……という自負がある。
あくまでも自信があるだけで、完璧な見極めは出来ないが。