70話 彼らのセンエースに対する愛は永遠。
70話 彼らのセンエースに対する愛は永遠。
『強大な敵を前にした程度で、この神への想いが揺らぐものか』という確信がある一方で、『心という特殊器官』の『脆さ』に対する『確信』もあるが故に、ゼノリカの面々はつい、怯えてしまう。
『神に対する想い』が、ほんの少しでも陰ってしまった『その時』に、自分という個は、存在意義を完全に見失い、魂魄の全てが形骸化してしまうだろう、と。
その心配は杞憂。
彼らのセンエースに対する愛は永遠。
その事実は、誰よりも、彼・彼女自身が理解している。
つまりは、『無駄な杞憂に対して疑心暗鬼になってしまうほど』に、ゼノリカの面々は、センエースを深く愛してしまっていた、という、あまりにもヤンデレな話。
この愛は、溶けない。
信仰の対象が、そこらの安い王なら、いつか、風化してしまうかもしれないが、信仰の対象がセンエースである以上、ゼノリカの光は永遠に輝き続ける。
――ゼノリカの面々は想う。
この世の全ての命がセンエースを崇め奉るべきである、と。
このゴミみたいな戦いが終わったら、すぐさま、世界中の、すべての生命に、センエースの尊さを理解させなければいけない、と。
強く、強く、強く、想う。
「がははははははは!!」
腹の底から大声で笑いながら、
カンツは、MP型センエースを殺し続ける。
徹底した殺戮を繰り広げていながら、その瞳は、一ミリもMP型センエースを見ていない。
カンツにとって、MP型センエースなど眼中の外側の端っこの石ころの裏に張り付いている虫のゲロより価値がない。
カンツの心をしめている光は、センエースだけ。
この上なく尊き命の王のみ。
★
常時、戦況の連絡を受け取っている田中が、
「MP型センエースは、のこり、あと10匹ぐらい? 了解。ほな、そのまま全部殺してくれてええで。全部死んだ後に、その死体を使って、なんか生贄召喚的なことをしてくるかもしれんけど、その時はその時や」
そういうと、田中は通信の魔法を切って、
センに視線を送ることなく、
「セン。お前の配下は、どいつもこいつも、ほんまに優秀やな。さすが、命の王の配下。全員、面構えが違う」
そう声をかけると、
センは、
「俺の配下だから優秀なんじゃない。優秀なやつを、かたっぱしから、かき集めただけ。……ところで、田中さんよぉ。ゼノリカの扱い方が、ずいぶんと手慣れているじゃねぇか、えぇ?」
「そら、200兆年も、あいつらの指揮をしてきたからな。そんだけの時間を使って、手慣れることすら出来んほどの事象なんて、そうそうないやろ」
「このまま、流れとリズムに乗って、スルっと、ゼノリカの王になろうって魂胆が見え見えだぜ。まったく、ふてぇ野郎だ。そんなことは、たとえ、お天道様とセンエースさんが許しても、ソレ以外の誰かしらが、『許さない』とかナメたこと言い出す可能性がなくもないと思うから、そういう逆風の対策も、しっかり考えつつ、まっすぐに頑張れ、田中トウシ。お前がナンバーワンだ。ゼノリカの今後……たくしたぜ」
「どさくさに紛れて、ワシに神帝のポジションを押し付けようとしとるとこ、悪いけど、ワシが王になるんを許してくれるんは、センエースさんだけで、お天道様ふくめ、他の全員がもれなく反対してくるから、絶対に無理やで」