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69話 ゼノリカの心情。


 69話 ゼノリカの心情。


「侮辱? 楽連に敗北することが? がははははは! 舐めているのはそっちの方だ! 我々ゼノリカは、この上なく尊き命の王センエース神帝陛下の配下だぞ! 貴様のようなただのカスを殺せないような落ちこぼれなど一人もおらんわぁあああ!!」


「ぴげっ!!」


 カンツが全力で拳を振り回したことで、

 MP型センエース987号の全身が爆散した。

 続けて、カンツは、

 楽連の面々が抑え込んでいた988号をしばき上げにかかる。

 カンツが言ったように、楽連の面々でも、どうにか、『殺し切ること』は可能だが、ソレをしようとすると流石に、あまりにも時間がかかりすぎるので、『とどめの一撃』は突破力のある天上に任せ、天下の面々は、『削り』と『足止め』と『場面支配』の作業に集中している。

 

 こうすることで、天上が秒でMP型センエースを殺せるようになり、制圧がスムーズにいく。


「がはははははは!」


 と、大声で笑っているが、

 しかし、心では一ミリも笑っちゃいない。


 むしろ、濁流のような涙を流したい気持ちでいっぱいだった。


 ゼノリカの面々は、本来の記憶を取り戻すのと同時、田中から『センエースが、何をしてくれたのかの全容』を、脳内に叩き込まれている。


 センエースの、『バグった献身』を理解すると同時、ゼノリカの面々は、滂沱ぼうだの涙を流した。

 中には反射的に自害を考えた者もいた。

 『この上なく尊き命の王を、自分の手で何度も死に至らしめた』という事実に狂ってしまいそうだったから。

 しかし、彼・彼女らは、みな、優れた頭脳を持っていたし、『センエースの想いを理解していた』ので、『自分たちの死を、主は嘆かれるだろう』という視点に秒でたどりつく。

 また、自死は『重荷を投げ出す逃避』でしかないとも思った。

 『死んで楽になろう』などと、そんな甘えは許されない。

 己の罪と向き合う方法は、ただ一つ。

 滅私の奉公でもって、王にその身の全てを尽くすこと。

 そんな結論にいたった『ゼノリカの面々』は、

 『とにかく主のために尽くしたい』という想いに飲み込まれた。

 とにかく、なにか、主のために働きたい。


 そう思っていた矢先、『センエースの名を騙るバカども』が沸いて、阿呆のように暴れ出したので『これ幸い』とばかりに、ゼノリカの面々は嬉々として迎撃に出た。

 相手が『とてつもなく強大な化け物である』というコトなど、躊躇する理由にならなかった。

 ほとんど反射で飛び出して、以降は、ひたすらに、バキバキの目で暴れ続けているゼノリカの面々。

 彼・彼女らの目は、ハッキリと叫んでいた。

『死は全く怖くない。一番恐れるのは、主の名を騙る愚かな敵に対する、この純然たる怒りが、ほんのわずかでも揺らいでしまわないかということだ』

 と。


 『強大な敵を前にした程度で、この神への想いが揺らぐものか』という確信がある一方で、『心という特殊器官』の『脆さ』に対する『確信』もあるが故に、ゼノリカの面々はつい、怯えてしまう。


 『神に対する想い』が、ほんの少しでも陰ってしまった『その時』に、自分という個は、存在意義を完全に見失い、魂魄の全てが形骸化してしまうだろう、と。


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