48話 悪夢をナメてはいけない。
48話 悪夢をナメてはいけない。
この程度、センエースならば、対処できる絶望だった。
強くなりすぎた今のセンならば、悪夢バグチームを封殺することも可能だった。
けれど、悪夢バグが時折、後ろでボケっとしている魂たちを狙ってきて、
その対処を強いられるため、センの消耗が、だんだん大きくなってきた。
――100時間が経過したところで、
「余裕がなくなって、護衛が露骨になってきたな、センエース。最初の方は、偶然や失敗を装っていたのに、今となっては、ただ全力で守っているだけじゃないか」
『たまたま射線がかぶっただけ』
『よけきれなかっただけ』
『守る気はなかったが、結果的には偶然そうなった』
――最初の方は、その体裁を、どうにか保っていたセンだが、
そんな『余裕』がいつまでも通せるほど、悪夢バグの脅威はぬるくない。
「……はぁ……はぁ……」
ボロボロで、息も絶え絶えになってきているセン。
そんな状態だが、目はまったく死んでいない。
なぜなら、
「ごちゃごちゃと、ワケの分からんことを言っているヒマがあるのか? 余裕がないのはそっちの方だろ。もうあとは、『人型のてめぇら』しか残ってねぇぞ」
『悪夢バグ』と『副官』以外の、
『9998体の虫』を迅速に処理したセン。
もうすでに、終局は見えている。
あとは、読み切った流れを詰めていくだけ。
「ハッキリ言うが、てめぇらはそんなに強くねぇ……戦闘力も、パターン化された処理速度がはやいだけ……総合的な対応力という視点で見たら、アダム以下だ……数値の大きさ以外は全部ゴミ。『時々、後ろの魂を狙う』という悪手を撃ってくれるのも、こっちとしては、楽なだけ」
ペース配分をシカトした結果、体力も集中力も、かなり削ってしまったが、
無茶をしなければ、ここまでくることはできなかった。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
なんだって、そう。
ハイリターンには、ハイリスクが伴う。
「さあて、それじゃあ、サクっと終わらせようか……今回の絶望は、アダムの時と比べて、だいぶヌルかったな。俺を終わらせたかったら、あと、5倍ぐらいは負荷を上げないとお話にならないね」
と、すでに、感想戦に入っているセン。
そんなセンに、
悪夢バグが、
「私たちという絶望が、たかが『ここまでの5倍』程度で終わるとでも?」
「……ふぇ?」
そこで、副官が、パチンと指を鳴らした。
すると、
大量のジオメトリが現れて、
そこから、また、99998匹のバグが出現した。
「……ほぇ……?」
さすがに、空いた口がふさがらないセン。
そんなセンに、悪夢バグは言う。
「無限蘇生を持っているのがアダムだけだと、いつから錯覚していた?」
「……」
そこで、悪夢バグは、再登場した9998匹の虫と副官に向けて、
「全員でカンファレンスコールを撃つ。弾幕にする必要はない。射線の中に魂をふくめれば、センエースは、どうせ避けないからな。一極集中でいこう」
そう言うと、
全員が魔力を、悪夢バグへと集中させていく。
そして放たれる、強大な魔力が込められた、ナイトメア・イビルノイズ・カンファレンスコール。