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55話 俺が『もうええんちゃうかな?』と尋ねた時は、『なんでやねん』と鼻で笑え。それがお前の贖罪だ。


 55話 俺が『もうええんちゃうかな?』と尋ねた時は、『なんでやねん』と鼻で笑え。それがお前の贖罪だ。


 田中は、無数の返事を考えて、添削して、『これではダメだ』・『もっと届く言葉はどれだ?』という、『こわだりの熟考』を経てから、


「余裕で全然、まだまだ強くなれる。『どのぐらい強くなれるか』の具体的な詳細は、一ミリも分からへんけどな。……お前の『底』は、ワシごときに測れるものではないから」


 本気のメッセージを伝える。

 『想いよ、届け』と願いながら。

 表情には決して出さずに、

 魂魄の奥から溢れ出た想いを丁寧に精緻に整頓して、

 豪奢なブリリアントカットを施した上で、ぶつける。


 田中の本気のメッセージを聞いたセンは、

 グっと奥歯を噛み締めてから、


「だったら、二度と、くだらない許可を出すんじゃねぇ。いらねぇんだよ、そんなもん」


「お前が『もうええんちゃうかな?』と尋ねてきたから、『ええと思うで』と答えただけやろがい。文句言われる筋合い、一個もないねんけど」


「俺が『もうええんちゃうかな?』と尋ねた時は、『なんでやねん』と鼻で笑え。それがお前の贖罪だ」


「なんでやねん(笑)」


「なにわろてんねん!! 殺すぞ!」


「理不尽も、ここまでくれば、サウナでととのった後ぐらい清々しいな」




 ★




 ――『蝉原』の革命は、激しく順調だった。

 一つの巨大な壁を越えたことで、爆発的な成長を見せた。

 もはや、『弟子たちだけ』では訓練にもならないので、

 『破壊衝動ソル』自身も、鍛錬に直接参加するようになった。


 破壊衝動ソルを中心としたフォーメーションで、

 蝉原をボッコボコにしていくスタイル。

 蝉原は、非常に強くなったが、

 しかし『センエースが大きくなるほどに自身も大きくなる』という特質を持つ破壊衝動ソルが相手だと、さすがに手も足も出ず、


「ぶはっっ!」


 みぞおちに、特大の一撃をいただいて、噴水のように吐血する蝉原。


 ソルは、『本気の10分の1も出していない』のだが、しかし、蝉原は何もできずにいた。

 そして、蝉原は、ソルが『本気の10分の1も出していない』ということを理解していない。

 蝉原は、ソルの力を理解できる領域にいない。

 『150兆年以上の積み重ねを経たセンエースの膨らみ』と同調している今のソルは、信じられないほど膨大に育っており、その力は、蝉原ごときに理解できる範疇にない。


 ゆえに、


「見えてきたよ、ソル……そろそろだ……そろそろ俺は……君を捕まえる」


 トンチンカンなことをほざくにいたる。

 一応、言っておくと、蝉原が、ソルのシッポを掴みかけているのは事実。

 ただ、それは、『手抜かりなく手を抜いているソル』のシッポであり、

 つまりは、拙い幻影にすぎない。


「……」


 ソルは、ポーカーフェイスを貫き、

 蝉原が、『10分の1のシッポ』を掴むのを気長に待っている。

 もはや、まったく焦った様子はない。

 無の境地に近い。


 ――ハッキリいって、ソルは、もう、諦めていた。


(蝉原は天才だ。そして、ここまで、蝉原なりに頑張ってきた……だが、センエースの積み重ねが、あまりにムチャクチャすぎて、話にならない……蝉原ではどうしようもない……2兆年を、3兆年に延長しても、焼け石に水……)


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