30話 蝉原クーん、がんバっテー。
5年連続毎日2話投稿前夜祭記念、
コミカライズ版センエース、
「まんが王国」「コミックシーモア」「eBook japan」で配信されている記念、
1日10話投稿!
3話目!
30話 蝉原クーん、がんバっテー。
根性だけは、低下した分だけ、全体のシルエットが薄くなってしまう。
――ゆえに、『修理』にも限界がある。『これ以上は直せない』というラインがあり、蝉原は、そのライン上でタップダンスを踊っている。
――そんなこんなで、5000億年が経過した現在、
蝉原は、
「ははははははは」
死んだ目で、ずっと笑い続ける人形になっている。
壊れるたびに、ソルは、全力で修正するのだが、
しかし、何度修正しても、蝉原は、またすぐに壊れる。
「……まずいな……本当に壊れたか?」
ソルは、そこからも、何度も、何度も、蝉原を修正し続ける。
壊れて、修正して、というのを、短期間に何千万回と繰り返す。
そのたびに、蝉原の中で、何かが壊れていく。
ズタズタのぐちゃぐちゃになって、
「ダメだ、戻らない……中心の損傷が激しすぎる。どうする……」
「ははははははは」
「……壊れたふりをして、スキをうかがっている……というわけではないだろうな。『1兆年以上が経過して、ある程度、私を削り切れる見通しがついた状態』とかならともかく、今の蝉原では、どうあがいても、私を削り切れない……一発か二発、不意打ちをかませたとしても、そんなものは、焼け石に水……それが理解できない男ではない……」
『可能性がある状態』なら、『騙し』の可能性もありえなくはない。
だが、今の蝉原では『無理』なので、その可能性は除外される。
「仕方ない。こうなったら、秘密兵器を使うか」
そうつぶやくと、
ソルは、
蝉原の精神を、
「ぶはっ……はぁ、はぁ……ん? …………あ、ああ……そうか……そうだった……俺は、まだ……この地獄にいるのか…………………………………………いつ……おわるんだよ……もう、勘弁してくれ…………」
現状可能な『限界まで修理』した上で、
アイテムボックスから、スマホ型のアイテムを取り出して、
その液晶画面を、蝉原に向けて、
「蝉原、これを見ろ」
そう言って、液晶部分に触れると、
画質の粗いムービーが流れはじめる。
そのムービーに出演しているのは、
センエース。
映像の中のセンは、なんだか、画像加工されているような鈍い笑みを浮かべ、
『蝉原クーん、がんバっテー』
と、明らかにツギハギくさい音声で、
応援メッセージを送ってくる。
それを見た蝉原は、とことん冷めた目で、
「え……これ……どういう……なにを目的にして……こんな……クソみたいな……」
なぜ、こんなクソみたいな事をしているのか、
本当に分からなかった蝉原は、
ガチの困惑顔で、ソルに、詳しい説明を求めた。
すると、ソルは、アホのマジメ顔で、
「大事な人に応援されると、人は頑張れるものだろう?」
「……え、それ、本気で言ってる? それとも、出来の悪いボケをかましてる?」
「私は、いたってマジメだが?」
「やばいな、お前……」
「くく……冗談だ」
と、一度笑ってから、
ソルは、液晶をタップした。
すると、ムービーが切り替わって、
今度は、センエースが、配下たちと殺し合っているシーン。
「……これは……」
「センエースも、貴様と同じように、時の牢獄の中で、とてつもない時間をかけて、鍛錬を積んでいる。これは、センエースが鍛錬を開始してから7000億年が経過したタイミングの切り抜き動画」
「……7000……」
「見れば分かると思うが――」
「……」
「――貴様の方が強い」




