24話 獄中の進化。
24話 獄中の進化。
「本来のラスボスプロジェクトに戻すか? いや、でも、半端な個体を適当に創造しても、センエースの相手は務まらない。『積み重ねた器』を使わなければ意味がないし、根性ランクSSクラスはそう簡単に創れない。『今の蝉原を器にしたセンエースのコピー体』を創るか? いやぁ、それは流石に、『センエースコピーの劣化版』にしかならない気がするなぁ。不純物が混じって濁るだけ。綺麗なダイアモンドに不格好な傷をつけるようなものだろう」
「殺して お願い」
「やかましい。黙ってろ、ポンコツ」
雑にそう言って、すがってくる蝉原を蹴り飛ばす。
飛ばされた蝉原は、ずさぁと倒れ込み、そのままピクリとも動かなくなる。
もちろん、死んではいない。
ただ、動く気力がないだけ。
その様を見たソルは、
心底からガッカリといった具合のタメ息をついて、
「たかが300億年ぽっちで、ここまで終わってしまうとは 貴様なら自力でも250万年耐えられると予想したが、それは誤りだった。貴様の、そのクソしょうもない器では、良くて2~3万年限度だろう。全く……はぁ……」
深いタメ息が止まらない。
「蝉原ごときに期待した私がバカだった」
そう呟くと、
ソルは、蝉原の首を掴んで、
「ハッタリと威勢だけの、どヘタレ糞ヤンキーが。貴様には、ほとほと、呆れ果てた」
そう吐き捨ててから、
自身の口を、5倍ぐらいの大きさに膨らませて、
そのでかい口で、蝉原の頭に、ガブっとくらいついた。
グシャリと頭を砕き、そのままバキバキと咀嚼。
あらかた細かく砕いたところでごっくん。
――こうして、蝉原の物語は正式に終わりを迎えましたとさ。
めでたし、めでたし。
★
「――極蟲神化――」
蝉原を飲み込んだ直後のことだった。
蝉原を自分の『中』で処理しようとした時のこと。
ソルは、確かに蝉原の声を聞いた。
と、同時、
「ぐぶっっ!!」
激しく吐血するソル。
すぐに気づく。
自分の『中心』に、害虫がかじりついた。
「あいつ 折れたんじゃ――ブフゥっ!!」
ソルの腹の中で、豪快に暴れている蝉原。
噴水のように血をはくソル。
ソルは、自分の口の中に腕を突っ込んで、
「うぐぐっ、うげへっ!!」
豪快に嘔吐。
大量の血と一緒に、
蝉原を吐き出した。
外に飛び出した蝉原は、
その右手に、黒い塊を握りしめていて、
「お前のコア、みぃつけたぁ」
ソルのコアよりもはるかに真っ黒な笑みで、ニタァァと笑う。
「ど、どういうことだ? 貴様は折れていたはずだ。完全に。な、なぜ、抵抗できる? それに、固有神化もできなかったはず――」
「固有神化なら、155億年ぐらい前の段階で使えるようになっていたさ」
「っ」
「試しに隠してみたら、お前、全然気づかないから、『あ、これ使えるな』と思って、密かに爪を研いだ。お前に一撃かませるチャンスがくるまで、じっと耐えた」
くくくと、性根の腐った笑みを浮かべて、
「俺の勝ちだ、ソル。テメェの全部をくらい尽くす」
そう言ってから、蝉原は、自分の口の中に、ソルのコアを押し込んだ。
ごくんと飲み込むと、
全身がグワっと熱くなる。
「ぐっ、はは、はははははぁっ! でかいなぁ! これはいい! 300億年積んだ俺が、破壊衝動ソルを手に入れたら、これはもう無敵だろ! はははははぁっ!!」




