20話 鍛錬の効率としては最強な状況。
20話 鍛錬の効率としては最強な状況。
『田中&配下たち』の方が圧倒的に強く、気を抜けば3000回殺されてしまうが、気合を入れて立ち向かえばギリギリ乗り越えられる――という、このスーパー劣勢状態は、メンタル的には大分しんどいところだが、『鍛錬の効率』という視点で見ると、むしろ、これ以上なく理想的な状態と言える。
鍛錬の効率は『ギリ無理ぐらいの難易度』が最強。
その『ギリ無理』を根性と底意地で乗り越えた時、取得できる経験値に、最強の補正がかかる。
これはフィクションではなく普通に、人間の構造上の常識。
筋肉や脳みそや神経はそういうふうにできている。
(この成長ペースを維持できたら、3兆年以内に、『前回のMAX』以上のところまで持っていくことができるな)
家族にボコボコにされている中で、
センは、自分の『確かな成長』を実感していた。
センには、まったく才能がないが、しかし、『前回の5兆年』という『最強の師匠』がついている今、そこらの天才よりも遥かに爆速で強くなっていく。
センエースは膨らんでいく。
どんどん強くなっていく。
これまでに、何度も『リセット』を経験しているというのも大きい。
『磨きぬいてきた全てを奪われて最初からやりなおし』――『その経験』も、センの中で器になっている。
センエースは、『積み上げたものをぶっ壊される』という『少年地獄』にも慣れてきた。
バグや裏技での近道に甘えない。
ずっと、ずっと、ずっと、本物の経験値を積み重ねてきた。
『すべてを奪われて、しかし、それでも、決死の覚悟で運命に抗い続ける』という、『狂気の戦い方』をマスターしてきていた。
その上で、『絶対になくさないもの』を『ローグライクゲームの永続強化要素』のように、大切に磨き上げてきた。
だから舞える。
いつまでもずっと。
どれだけの絶望を前にしても。
どれだけのバグや裏技に苦しめられても。
センエースは、まっすぐに前を向いて、立ち向かうことができる。
――そんなこんなで、『なんで死んでいないのか分からない』という超絶ギリギリの綱渡りを乗り越えて、センは、なんとか、最初の10年を乗り越えた。
★
センエースが、必死に頑張っている裏で、
『破壊衝動ソル&蝉原』も、頑張っていた。
本来は、丸々オールカットの予定だったのだが、
蝉原さんも、本当に、だいぶ頑張っているので、
さすがに、完全オールカットは可哀そう。
ということで、ちょっとだけ、蝉原さんの軌跡も記しておく。
★
――蝉原が、ソウルゲート・オリジンで地獄の修行を開始してから3万年。
サイコジョーカーにどうにか適応して、普通に動けるようになった蝉原さん。
だいぶしんどいが、『どうにか闘うことも可能になった』というタイミングで、
蝉原は、弟子たちと戦うようになった。
今、蝉原は、弟子たちの激しい猛攻を受けて、ボロボロになっている。
基本的に、ここでの修行内容は、『破壊衝動ソルによって強化された弟子たちと殺し合う』というのがメイン。
なんだかんだ、けっきょくのところ、
『本気の殺し合い』という『実践』に勝る修行はない。




