19話 武の極み。
19話 武の極み。
田中&配下たちは、5兆6000億年の中で、磨きに磨き抜かれており、ありえないほどの高みに達している。配下だけなら、正直、もうちょっと楽だった。しかし、『特攻隊長田中と、田中を全力サポートする愉快な仲間たち』という組み合わせが、あまりにもしんどかった。そして、もちろん、『天下を守らないといけない』という縛りもエグかった。
――ハスターの存在値がそこそこなので、最低限の抵抗は出来ているが、田中の強さがエグすぎて、殺されまくった。
普通に3000回殺された。
2年ぐらいで普通に削り切られた。
とてつもなくヤバい状況なわけだが、
しかしセンエースの真骨頂は、いつもそこから。
存在値は失ったが、
5兆6000億年かけて磨き上げてきた『イカれ方』は失っていない。
「絶対に死んでやらんぞ、くそったれがぁああああああっ」
ぐちゃぐちゃにされていながら、しかし、
『なぜか、なかなか死なないという、破格の【人間失格】ぶり』を見せつけていく。
『ドリームオーラ・オメガバスティオンの練度』に関しては『失っていない』というのも、不死身ぶりに拍車をかけた。
存在値は失ったが、磨きぬいた技能は失っていない。
『あまりにも奇抜すぎる命の在り方』を魅せつけるセン。
配下たち全員が、キモがっている。
センエースは本当にキモ過ぎる。
闘いの途中で、カンツが、
「戦力的には、ワシらの方がはるかに上だが、精神力では、まったく歯が立たんな! まさか、これだけの戦力差があって、削り切ることができんとはっ!!」
歯噛みしながら、『情けなさ』を叫ぶ。
実力差を考えれば、とっくの昔に削り切れていなければおかしい。
楽勝で圧殺して当然。
なのに、センエースは、ズタボロの状態ではあるものの、メンタル的にはギンギンの状態で、元気に暴れ散らかしている。
配下たちは、田中を軸にした最強フォーメーションで、とにかく、センを削り切ろうと必死。
決して、ナメることなく、もてる全てを賭して、センエースに圧力をかけていく。
けれど、センエースは死なない。
何をしても削り切れない。
もう、何がなんだかわからない。
『ただ殺せない』というだけでも気持ち悪いのだが、
気持ち悪いポイントはそれだけにとどまらない。
戦闘時間が長引くにつれて、センエースの戦闘力がめきめき上がっていくのだ。
配下たちは、みな、武の天才なのだが、しかし、
そんな彼らを置き去りにするほどの資質を、
センエースは魅せつけていた。
――ご存じの通り、センエースに才能はない。
武のセンスは皆無。
しかし、今のセンは、配下たち全員を震え上がらせるほどの資質を魅せつけている。
なぜか。
理由は純粋。
――ループのためのエネルギーを回収するため、センは存在値という『数値』を失った、が、しかし、その結果、だからこそ、『武の真髄』に対する執着が爆増した。
『少ない数値で、より多くの出力を捻出』『柔よく剛を制す』『機に発し感に敏なる』という『武の極み』に没頭できる。
『田中&配下たち』の方が圧倒的に強く、気を抜けば3000回殺されてしまうが、気合を入れて立ち向かえばギリギリ乗り越えられる――という、このスーパー劣勢状態は、メンタル的には大分しんどいところだが、『鍛錬の効率』という視点で見ると、むしろ、これ以上なく理想的な状態と言える。




