16話 レベルや存在値なんか飾りです。エロい人にはそれがわからんのです。
16話 レベルや存在値なんか飾りです。エロい人にはそれがわからんのです。
――あらかた準備が終わったところで、
ヌルが、センの目をみて、
「もう止めはしないが……最後に、もう一度だけ聞く。本気でやるのか? もう引き返せないぞ。ループ回数を200兆年分にまで膨らませる過程で、お前の願い通り、『途中で辞めることはできない』というアリア・ギアスをかけた。開始したら、200兆年やり切るまで終われない。本気で……今まで稼いだもの全部を捨てて、200兆年も――」
「しつけぇなあ」
「しつこくもなるさ。だって、また、存在値一桁から始めることになるんだぞ。お前が必死に積み上げた5兆年が消える。完全な存在値一桁のゴミからスタートして――」
「俺の器は消えない」
「っ」
「俺が積み重ねた5兆年を使うことにはなるが、『苦しみぬいて5兆を魂に刻んだ事実』は消えない。俺の中で『器』として残り続ける。レベルや存在値なんか飾りです。エロい人にはそれがわからんのです」
「……」
「さて、じゃあ、そろそろ始めるぞ。200兆年……長い旅になりそうだ」
★
センエースを見送った後、
ヌルは、天を仰いで、
「まさか、俺の経験値で足りないとは思わなかった。クソッタレが。俺はピエロにもなれねぇのか」
と、情けなさそうにつぶやいている。
そんなヌルに、ソルが、
「いや、流石に足りているぞ」
と、声をかけてきた。
「は? 足りてる? え? だってあいつ……え? どういうことだ、ソル。ぁ、お前、もしかして、あいつに、偽の情報を流した? なんてことするんだ、てめぇ!」
「いや、俺は正確な情報をわたした。センエース・ヌルからゼノリカを完全に奪還し、その功績を、すべての命が理解し、センエースを崇めた時の信仰ポイントと、センエース・ヌルの数値を完全に消化した際のポイントを全部使えば、センは『真に輝く明日』に届く。その事実をセンは確実に間違いなく正確に知っていた」
「じゃ、じゃあ、なんで――」
「ヌル。貴様の献身も、そこそこたいしたものだと思うが、センエースはその比じゃなかった。それだけの話だ」
「……」
★
「……」
意識を取り戻した時、センは、自室で、ゲ〇ムボーイ片手に、
ムーア最終の作成に取り組んでいた。
センは、いったん、ゲ〇ムボーイの電源を切って、深く息を吐いてから、
「……え、マジで200兆年やる感じ? まじで?」
と、己の暴挙を自問自答。
ヌルの前では、『救いを求める弱者の前ではカッコつけてしまう』と言う悪癖が炸裂してしまっただけで、本心で言えば、
「もう、まじでぇぇ?! せっかく5兆かけて磨いた経験値、全部無くしたの? ふざけんなよ。なんでだよ。なんで、あんな、顔面偏差値48のへちゃむくれのために、俺が5兆年を棄てた上で、200兆年も地獄みないといけないんだよ。ふざけんじゃねぇよ。可愛い女の子のためとかなら、まだわかるけど……いや、仮に、相手が世界一の美女でも、流石に、5兆年の損失と、200兆年のおかわりはありえねぇだろ。もう、勘弁してくれよ。もうほんとに、もう あー、もう」




