7話 ザンクさんは、実は超性能。
7話 ザンクさんは、実は超性能。
「気づいていないかもしれないが、こっちは疲れてんだよ。5兆6000億年も、ひたすらに頑張り続けて、その結果、茶番をつきつけられて、ぶっちゃけ、ガチの死闘を演じるよりも、普通に、精神的にしんどい状況なんだよ。こちとら、一刻もはやく帰って休みたいんだよ。だから、お前を黙らせたい。それだけだ。マジでそれだけ。いや、ほんとに。本当のマジで。これに関しては、照れ隠しとか抜きのマジで」
「そんなに休みたかったら、ザンクさんを殺して休めぇ!」
そう言いながら、1002号は、ひたすらに、センへと殴り掛かる。
そのすべてを、センは、さらさらと、よどみのない流水のように回避して、
「閃拳」
軽めの閃拳を、1002号の腹部にたたきつける。
「ぶげへっ」
盛大に吐血して、フラフラと、その場に倒れこむ1002号。
くらくらして、ずきずきする。
そんなボロボロの自分と向き合いながら、
1002号は、
「……今のザンクさんの……存在値は……1京を……超えとんのやぞ……その上で、トウシがCPUやってんねんぞ……この5兆年の間、トウシの中で……ザンクさんも、お前と闘い続けて……戦闘力を上げてんねんぞ……それやのに……こ、こんなに差がつくんおかしくね? ……な、なんで、こんな差がついとんねん……」
「そりゃ、こっちは、山ほどの縛りを受けた上で訓練していたからな。そっちと同じ成長率なわけがねぇ。どんだけ才能に違いがあろうと、流石に、あれだけの縛りの恩恵を凌駕することはできねぇだろうよ。てか、ずっと裏で見続けていたってんなら、俺がどのぐらいの高みに至ったかもわかってんじゃねぇの? なんで、そんな疑問をいだくことがある?」
「別に……本当にわかんなくて聞いたわけやない……嘆いただけや……嘆きにマジレスすんな……きしょいのう……」
そう言いつつ、
1002号は、回復魔法で自分を整えていく。
ある程度、整ったところで、
「こっちかて、そこそこの縛りをした上で、訓練しとった……もちろん、そっちよりは下やったけど、それなりに、ゴリゴリに訓練しとったんじゃい……それやのに……まったく歯が立たんということを悔しく思うぐらい、権利として正当やろがい」
「そんなこと言われても知らんがな、としか言いようがないな」
と、軽い言葉で、1002号の嘆きをながすセン。
そんなセンを尻目に、1002号は、
「……『ザンクさんだけでも、最低限の対応はできるはず』と自惚れとったんやけど……まさか、ここまで、話にならんとは、あまりにも想定外やった……ハズぅてしゃーない……仕方ねぇ……」
そう言ってから、ギリっと奥歯をかみしめ、
「……オメェの出番だぞ、ヌル」
そう言うと、
1002号の全身が、『黒の上裸鎧』に包まれていく。
そして、意識も切り替わったようで、
「……1002号の野郎、そこそこ期待してやっていたのに、クソの役にも立たなかったな。あいつは、我ら、『センエース殺し隊・五天王』の中でも『最弱の面汚し』よ」
「ヌル、か……んー、どっかで聞いたことがある気がするけど、あんまり思い出せないってことは、たぶん、ザンクさんとやらと同じで、たいしたやつじゃないってことだろうな」
「なかなか、せめた挑発じゃないか、センエースさんよぉ。この俺をナメてしまうことは世界のデフォルトだとしても、しかし、その代償は重たく払ってもらう。心の底から後悔させてやるぜぇえ!」